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その1

その1
アキラ


しかし…、昨日は予想外の人間が立て続けだった

タクヤと”あの”週刊誌記者がオレの前に現れて…

この二人と接触したら、やっぱり麻衣の存在に考えが及ぶ

そう言えば、アイツ、昨夜も夢の中に来やがったし…

やっと帰ってこれたのに、ケイコちゃんのこと考えようとすると、いつも麻衣が入り込んでくる

今日は一応病院だし、昼食終わった後見計らって、午後からにしようかと思っていたが…

朝早くから目が覚めちゃうし、落ち着かないわ

よし…、午前中にでも行ってこよう

なにしろ、麻衣との話は少しでも早く済ませたいし

ここにきて中途半端な遠慮は無用だ…

朝食を喉に通す頃には、そう割り切っていた

...


”あの悪夢の日”は、日付をまたいでおよそ10時間超、監禁状態だった

緊縛したオレをリンチし、薬物注射させ、オレの大切なギターを、床に敷いたコンクリートブロックに打ちつけて破壊した

その時オレは尿意を覚えて、トイレに行くことを許され、縄はほどかれていた

ギターの破壊行為に陶酔気味のイカレた女子高生を阻止しようと、麻衣に向かっていったオレは、屈強な相和会の連中に取り押さえられる

そして‥、赤子さんと一緒に選んで買った、思い入れのギターで麻衣に横っ面を一撃された

手足は自由になっていたが、麻衣の暴挙を拒むことさえ出来ないオレ

縄から解放されても、目の前の年下のガキはやりたい放題だった…

その無力さをオレに思い知らせるため、オレの体を縄から解放したんだろう

今思えば、麻衣は巧妙に演出していた…

オにそう思えた

何とも恐ろしい女だ、麻衣というヤツは…


...


そんなイカレたハンパない女にもかかわらず、オレはヤツが警察に”捕まりに”行く日、アイツの部屋で麻衣と会った

そして今日もまた、性懲りもなくヤツに会いに行く…

警察から戻って、まだケイコちゃんとも会っていないというのに…

ヤツの恐ろしさを垣間見たであろう、タクヤあたりからすれば、オレの方のイカレ具合もいかがなものかと、首を傾かれそうだ

ひょっとして、麻衣はオレをいじくって面白がっているだけなのか…

一度とはいえ、自分とレズった相手が親しくなった男に対して…

あの時、ヤツはオレを試すとか、なんだとかって言っていたけど

ただ…、俺なんかに対しても真正面というか、なんというか…

漠然となんだが、ヤツと会って、いつも感じるのはこのことだ


...


着いた…、相模浦中央病院に

その日は、エントランス近くの植栽エリアの手入れで、職人が何人も作業をしていた

そのあおりで、バイク置き場が狭くなって満車状態だ

オレは、自転車置き場脇のスペースにバイクを止めた

ちょっと目立つけど、まあいいか…

さて、行くぞ…!

麻衣のクソ女め!

少しはやつれていやがれってんだ、あの野郎…!


...


その前に、昨夜下書きした赤子さんへの返事、清書しなくちゃ…

あの人も、俺が警察にお世話までとは、承知していないようだ

であれば、詳しい説明は、一段落して会ったときにしようと思う

まずは、今もオレのプロへの機会を気遣ってくれてるお礼をしなくちゃ

それと…、さりげなく”あの子”との進展具合も心配(?)してくれてるので、その辺もか

と言っても、通り一遍のことしか今は書けないけど…


...


赤子さんへの返事を近くのポストへ投函後、オレは麻衣の入院先へ向かった

さわやかな秋晴れの午前10時ちょうどだった

バイクに乗って初秋の風をきりながら、オレは考えを巡らせていたよ

本郷麻衣…

この子を初めて見た時は、いわゆるズべとかスケ番の典型と思っていた

ところがどうだ

ヤツはヤクザ顔負けのとんでもない凶暴な女だった

大阪行きの夜、オレを拉致した黒幕はなんと、こいつだよ!

今年17歳の一女子高生だよ、こいつ…

世も末だろ

あり得ないって…




更新日:2019-08-21 21:14:53

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