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その8

その8
夏美



私は言い回しにかなり神経を使って、土佐原先輩に切り出した

「執行部会では、ます、県外の主だったところが旧赤隊系と握手を交わしたことをぶち上げてきます。そこで、真澄はいっそ、その勢力を取り込むべきだと迫ってくる…。そう読んでいます。ドッグスの1年、本郷麻衣の影響力を活かして…」

「なんか、その構図…、旧執行部を下ろした時と似てるな」

そう言う先輩の表情は訝しげだった

「ええ、真澄は本郷麻衣に乗せられていますよ。あの二人は以前から繋がっていたようですし。今回は、急進派の本当の実践者は本郷だと…。赤塗り拡大志向のシンボルであった荒子に熱い視線を送っていた県外の後続勢力との溝は、本郷が埋められる。そういう流れに持っていくはずです」

ここで私は、かなり断定的な口調で先輩に説いた


...



「じゃあ、夏美の見解をまず聞こうか。真澄がそう主張をしたとして、それは南玉連合の為になると考えているのか否かだ」

「本郷に今回の事案を託すようなことをしたら、正統南玉連合は崩壊します。自殺行為に等しい。そう確信しています」

「そうか…。君のことだからもう確認していると思うが、現執行部はどうなんだ?」

「荒子と鷹美は私と同じ認識に至っています。いづみには先輩との申し合せをした上で、話すつもりです」

「なるほど…。では、執行部と君はこの問題をどう解決する考えなんだ?」

ここで、私の結論を告げなきゃ…


...



「この際、本郷を排除する方向に持って行きたいと…。二人とはそいう方針でいます」

土佐原先輩はここでタバコに火をつけ、ひと煙吹いた後、見解を述べてくれた

「夏美…、俺あたりでも、今何かと騒々しくなってきている現状は踏まえているよ。まあ、再編の空気は充満してるよな。もうパンパンにね。これはさ、世の中の変化もあると思うんだ。若いエネルギーの放たれ方も激変してる。要は南玉や都県境の今のフレームにも、変化が求められている。いやおうなしに。その流れは止められないほど大きい…」

どうやら南玉にひと波乱起こることは、容認してくれてる感じかな…




更新日:2019-08-19 21:22:56

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