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その3

その3
夏美



「先輩、執行部会議、今週の木曜日夜7時になりそうです」

「真澄の招集要請ってことね?」

「はい。執行部3人とOG代表の相川先輩、それと発議者の立場で、真澄先輩…、計5人ってことです」

「私としては発議用件が予測できてるので、OB、OGへの事前接触はしておきたいんだけど…」

「であれば、真澄先輩には言っといたほうがいいんじゃないですかね?」

「彼女に言えば、また、ぎゃあぎゃあうるさいでしょうし、あなたで留めておいてもらえないかな。土佐原さんには、その辺口裏は合わせておくから」

「わかりました。では、先日の打合せ通り…」

私は鷹美からの電話を用件のみ、3分程度で切った

彼女、それに荒子とは2日前の夜、綿密に真澄発議案を想定して、対処を話し合っていた


...



「先輩、これは私が至らなかったこと以外、何ものでもないっす。すいません」

荒子は会うなり、私に頭を下げてきた

駅構内のコーヒーショップなので、こういう”絵柄”はちょっと異様かな…

「いや…、あなたの従来からのポリシーを十分承知していながら、内部優先で頭を押さえた形だから…。対外面を疎かにしたOG代表の私の責任よ。おそらく、真澄は私のその”立場”を糾弾してくるわ」

「私と荒子は、南玉を旧来からの2派による確執を超えるために、手を携えたんです。最優先は内部対立を蒸し返さないことだと思ってます。その為の対策を講じるべきだと考えますが…」

「まさしく、鷹美の言う通りよ。だけど…、現実問題として、南玉に対する県外の望むものとミスマッチになってる。ここを見過ごせば、今のフレームをひっくり返したい連中に付け込まれる。今、目の前の問題はそこを根幹として引き起こってる訳だしね…」

「では、県外の望んでいるイケイケ路線を突き進むってことでまとめますか?」

鷹美は一途な面が時折、極に振れる傾向があるんだよな

そして…、バランス感覚がある半面、過度に自分を追い込む時がある


...



「鷹美、今回はさ、無理にまとめることをじゃ、解決に繋がらないと思うんだ。肝心なのは、あんたが言ってた従来の守旧派と急進派のいがみ合いの図式ではない、”溝”を浮き彫りにする。そして、我々がその浮き出たもの排除する…」

鷹美はえーって感じで私の顔を凝視してる

一方の荒子は、トレードマークの腕組みのまま、うつむいて聞いてるわ

今日、ここで二人まとめての理解を得ないと…

もう間に会わない…

私は決死の思いで、二人に私の考えをぶつけた




更新日:2019-08-19 21:46:55

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