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その10

その10
夏美



「…という訳でな。まあ、今はこれ以上は何ともだ。プライバシーにもかかわることだし。とにかく、彼女のOG取りまとめが出来る状況じゃないんで。今回は俺の方でなんとか手を回すよ」

「…すいません。では、ひとつ、よろしくお願いします」

参った…

何と、あの甲斐由美子先輩が…


...



「なあ、夏美。さっきの大きな変化の中には、今までのOB、OGのあり方も含まれてるよ。ご意見番的、重鎮ポストってのは、ここらで一考したい」

「先輩、それはこの前、総集会でお話しされましたよ。従来より一歩引いても、あくまで、お二人には肝心なところで組織が誤った方向へ踏み出さないように、目を光らせていただくってことで」

「ああ、だがね、我々の世代もだんだんと繋がり方が変容してるんだ。これまで通りビシッと総意をまとめて、現役に持って行けるってのに、そろそろ限界が来てる。いずれ耳に入るだろうが、こちらの”中”でもいろいろあるよ。まあ、いい大人だからこそ、互いに生じるしがらみやトラブルとか…。由美ちゃんの件も、それの類だし…」

「…」

私は言葉に詰まった

でも、先輩の言われることって、だいたいは分かる

ちょっとむなしい気もするが、これが現実だ


...



「大学受験もあるし大変だろうが、今の局面は夏美が要でないと、対処できないだろう。ご苦労だが、頑張ってくれな。もう、今まで通りには力になってやれないが、協力は惜しまないしな。はは…」

別れ際、車のエンジン音に交じって、運転席の窓からのこの言葉…

私は生涯、忘れることがないだろう

「先輩…、先輩…」

思わず涙交じりで、先輩の運転する車に手を振っていた


...



何しろ衝撃だった…

土佐原先輩から聞いた由美子先輩の”事情”

それは私たちとは違う居場所である、”大人の世界”を垣間見たことに他ならない

辛いことだが、甲斐由美子さんはもう、南玉連合幹部会に顔を出すことはないだろう




更新日:2019-08-19 21:25:29