• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 41 / 43 ページ

エピローグ

 ロッシュとダンパーがビョルンの構えるガレン城を訪れている間、ロージーはフォルテモたちとマローニュに残り、アイリーンの傍から離れなかった。その苦衷を知ればこそ、慰みでもいいから傍に居てやりたかった。
 ビョルンたちのフルデル討伐も無事に果たされていた。謁見の間の人は払われ、ロッシュとダンパーは膝を付き畏まっていた。何故、ノルドのわしまで?と、ダンパーはぶつぶつと文句を言っていたが。
「レイブン様の使者だ。堅苦しい挨拶は抜きにしよう。面を上げてくれ」
 ロッシュとダンパーは立ち上がると、依頼の一件を全て話した。想定していたことだろうが、ビョルンとテイジンが浮かない表情を浮かべていた。隠していた秘密をロッシュたちに暴かれたからだった。
 あの堂塔は夜の亡者の時代に興ったメルビス教の発端の地であったという。ロッシュたちの推測通りだった。ビョルンのグルーデンス家は、メルビス教の中心となった人物の一人であり、亡者の夜を、死者を操ることで夜の亡者から民を守った英雄でもあった。代々英雄の血筋ということだ。ビョルン自身、自らの功績で英雄と呼ばれているのだから。そしてメルビス教は、メルビスの操るネクロマンシーの術を秘術として教団が生まれた。
 亡者の夜明け以降、この地の英雄であるグルーデンス家は、死者を甦らすというまるで邪教のようなメルビス教を変え、教団と新たな出発を始め、そして過去を封印した。秘術を継承した術者を暗殺し、教団もネクロマンシーの術を封印したが、そのことでトニーデの魔法使いとして、同胞は袂を分かち合ってしまった。
 ビョルンは玉座から立ち上がった。
「ロッシュワードよ。おまえの言う通りだよ。だが、我が父君と同じく、私もそのような邪教は許さぬし、禁忌の魔法も葬ろうとしただけだ」
「亡者の夜という異常な時代の話だ。例え禁忌の術だとしても、その時代の民を守り生き延びたのだ。百年続いた狂気の時代だ。俺は今更それをどうこういう気もない」
 それを聞いて、ビョルンとテイジンは胸を撫で下ろした。
「ここ十数年、マローニュ近辺は全くの平和だったのだろう?そしてそれ以前も」
「それがどうした?」
「あのネクロというネクロマンサーは、破棄された堂の中で、ずっとあの辺りを守り続けていたんじゃないのか?フルデルや怪物がこちらに現れないのは、そのためだったのだろう。百年に亘りその身を亡者として捧げた虚ろな祈りは、あの堂の中でいつまでも響いていた。狂気の時代が産み落とした祈りの残滓。それがネクロの正体だろう。あんたらは、自ら禍を招いたのだな。この地を守る者を自ら敵に回したのだ。だが、それももう無くなった。あの地は、これからは領主であるあんたがしっかりと守っていかなければなるまい。話はそれだけだ」
「言われんでも分かっている。私を誰だと思っている」
 ロッシュとダンパーは踵を返した。
「ああ、そうだ」とロッシュは振り向いて、付け加えた。
「今度はなんだ?」
 ビョルンは苛立たしげだ。
「あんたらの秘密を黙っていてやる代わりという訳ではないが、頼みたいことがある」
 ビョルンもテイジンも眉根をしかめた。
「なんだ、言ってみろ?」
「大したことじゃない。英雄らしい所を少し見せてくれればいい」
 ロッシュはその条件をビョルンたちに飲み込ませ、マローニュへと戻っていった。

 フォルテモとピアニカはレビンとケリーの墓を参り、沢山摘んだ野花を墓前に供え、深く祈りを捧げた。それから、隠れるようにマローニュからビョルンのローランの都へと向かう荷馬車の一つに乗り込もうとして、荷馬車の主人に見つかってしまった。
「おおっと、エルフトたちかい。ああ、逃げなくてもいいよ。乗ってくかい?」
 二人はたんと藁を積んだ荷馬車の荷に座り、マローニュを去っていった。
「上手く逃げ出せたね」
「岩石じじぃ撒くのにゃんか楽勝にゃ。老いぼれノルドにゃんかに誰が捕まるもんきゃ」
「ローランに向かって、それからレイブンのところに帰る足、ゆっくり考えないとね」
「そんにゃことよりフォルフォル。ローランに着いたらあの歌ちゃんと教えるにゃ」
「うん、いいよ」
 ピアニカは忍び笑いを堪えていた。あにょ歌、今後木偶の坊たちの後をつけて行く時に、絶対役立つにゃと、ピアニカは悪巧みににやりと歯を剥いた。
「ピアニカ、人相が凄く悪くなってるよ。今悪いこと考えてたでしょ?」
「そ、そんにゃことにゃいわよ」
「だって、今、舌がぴりぴり痺れたもん」
「そ、そんにゃことよりフォルフォル。こんな時化た村でも、中々刺激的だったにゃ」
「うん。悲しいこともあったけど」
「にゃんだか、ヒュミルの里は嫌なことばっかりにゃ。群がって寄ってたかって、弱い者が弱い者を虐げるのは見ていて惨め過ぎるにゃ」

更新日:2019-08-15 10:07:37