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小説

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「うむ。その通りじゃ」とダンパーが頷いた。「ドワーフ小人はわしらノルドの死後の姿の一つと言われておる。ヒュミルたちの魂は星に帰ると信じられているが、わしらノルドはその生を終えると、魂は土に帰ると信じておる。そこからドワーフ小人やノッカーといった鉱山に纏わる妖精となり、いずれは偉大なる土の精霊ノームへと帰っていく。ドワーフ小人はわしらの魂の姿なのじゃ。まあ、わしらノルドの間での言い伝えじゃがの。故に、わしらノルドはドワーフ小人とは共生の関係でもあるのじゃからな」
「そんな話、初めて聞いたわ」と、ロージーは小さな驚きに目を瞬かせた。
 ロッシュは二人を見やり、再び話を続けた。

「それから人々はあらゆるものに縋った。信仰を持たぬ者ですら神に祈らずにはいられなかった。そうして幾つもの信仰が興り、退魔の祈りを授かった人々は、それである程度亡者を退けられるようになった。メルビス教はそうやって興った信仰の一つらしい。そして、メルビス教の中心になった人物の一人が、ビョルンのグルーデンス家だ。メルビス教は夜の亡者から更に民を守るため、禁忌とされる魔法に手を染めていった」
「禁忌?」とロージーは首を傾げた。
「ああ。目には目を、歯には歯を――」とロッシュはロージーに振り向くと、「――亡者には亡者ね」と、ロージーはロッシュと目を合わせ答えた。
「そうだ。ネクロマンシーという死者を操る魔法がそれだ。術者をネクロマンサーという。元々は死者の霊魂を呼び寄せ、未来を占ったり、助言を賜るというものだった。そして、そのネクロマンシーを操る者たちから派生したのが、トニーデの魔法使いだ。トニーデは古代王国期の魔法使いたちでもあった。その名は、古代王国期の魔法王と呼ばれた者の一人の名から取ったものと考えられる」
 ロージーは得心がいき、頷いた。

「なるほどね、話が読めたわ。ビョルンにしろメルビス教にしろ、その発端が禁忌とされた魔法であり、トニーデも言わば身から出た錆、同じ穴の狢って訳ね。ビョルンもメルビスも英雄扱いされているけれど、身包みを剥いでみれば、全ては自らの後始末をこそこそとやっていたということになるのね」
「そういうことだ。一つだけ許せないのは、トニーデの奴隷を生み出したことだろう。彼らは無辜(むこ)の者たちだった。トニーデと言っても、亡者の夜明けから先、派閥が別れ、袂を随分と分かち合ったらしいからな。古代王国復権派がいい例だ。古代王国は魔法使いたちが治めた世界。今の蛮人が治める世界に我慢がならなかったのだろう。トニーデの惨劇と称されるあの叛乱は、その一部のトニーデがやったこと。だが、亡者の夜の時代、ネクロマンシーの術によって民を守ったのも事実であり、また、操られた死者は無分別に冒涜したわけではなかった。志願した者が、その術によって守り手として起き上がった。死期の近い者、家族を守りたい者と様々にな。そして、ネクロマンシーの術を施し、また術者を選別し、次代へと教えたのが、メルビス教の名になったメルビス本人だった。時代を思えば、苦肉の策だったはずだ。メルビスは非常に優れたウィザードであったらしいからな。自らを悪徳のソーサラーと戒め、民を守り、そして、禁忌の術は秘匿したという訳だ」



更新日:2019-11-30 20:32:53