• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 39 / 71 ページ

 マリロンとオズバンは、怯むことなくじっと腰を掛けている。
「お姉さま。やっぱり水車小屋のケリーは魔女なのよ。みんなの言った通り、あんな余所者は信じちゃ駄目よ」
 怯える妹の肩をアイリーンは激しく揺すった。
「何言ってるのよ、ジャグリーン!あの二人に限ってそんなことあるわけないじゃない!あの二人があたしたちを平然と裏切るわけないわ!」
「昨日のあの占い」と、オズバンは二人の姉妹に言った。「あれは確かに占いでしたが、本当の目的は、トニーデの奴隷を見つけるためのものだったのですよ。快活なお嬢さん」
「なんですって!」
 アイリーンは今度はオズバンを睨んだ。
「いや、本当なのだ、アイリーン。そのオズバンもまた魔法使いなのだ」とマリロンは静かに付け足した。
「占いでもあの二人、いえ、妻の方ですが、トニーデの所縁の者と出ました。そして、昨夜、わたしとマリロン殿で遠見の水晶球を使い、動かぬ証拠も目撃しました」

 オズバンがそこで言葉を切ると、マリロンは静かに頷いていた。アイリーンは拳を握り、身体を震わせていた。
「トニーデの奴隷には、特別な烙印が押されています」と、オズバンはぽつりと言った。
「烙印?そんなもの無かったわ。あたし、ケリーとお風呂だって入ったことあるもの」
「それですよ、快活なお嬢さん。烙印を消しているのです」
「消す?そんなことできるわけないじゃない!」
「いいえ、できます。魔法ならね。彼らの婚姻の指輪。あの指輪こそが烙印を消す魔法の指輪なのです。魔法を施す様子も、昨夜マリロン殿とわたしで確認しました。そこで、あの二人と親しいあなたにご相談なのですよ、快活なお嬢さん」
 沈黙の中、マリロンが口を開いた。
「アイリーン。その指輪を奪えば、証拠を見せられる。指輪さえ奪えば、烙印はケリーの背中に露となるのだ。しかし、それをどう奪えばよいのか?それが問題だ」
 アイリーンは目を瞑っていた。深く何かに思いを巡らすように。それからややあって、アイリーンが目を開いた。

「あたしが取ってくるわ、その指輪」
「いいのか、アイリーン?」と、マリロンは司祭である身分上、自重気味に言った。
 アイリーンは深く頷いた。
「今夜、水車小屋に忍び込むわ。そして指輪を取ってくる。でも、もし、それでも烙印が露にならないなら、あの二人は無実よね?トニーデとは関係なくなるのよね?」
 マリロンはアイリーンにゆっくりと頷いた。
「あたし、信じてるわ、あの二人のこと。絶対何かの間違いよ」
「で、どうやって指輪を奪うのだね、快活なお嬢さん。寝静まる時は、指輪は二人の寝室の小さな木箱の中ですよ」
「大丈夫、考えがあるから。ジャグリーン、あなたにも手伝ってもらうからね」
「え?わたしは嫌よ。魔女に近寄るなんて、そんな恐ろしい真似」
 ジャグリーンは身を引いて、頭を小刻みに振った。
「大丈夫よ。忍び込むのはあたし。あんたがやることは簡単なことよ。それに、この話を聞いた以上、あんたも一蓮托生でしょ?二人の潔白を証明しなくちゃ」
 マリロンとオズバンは互いに目顔で笑んだ。アイリーンとジャグリーンは今夜の作戦のため、屋敷へと引き返していった。


更新日:2019-11-30 20:29:42