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小説

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「抜っき足、差っし足、忍び足っと」
「フォルフォル。そこは忍び足じゃなくて猫の足にゃ」
「うん。抜っき足、差っし足、猫の足」
「その調子にゃ。でも、今は静かにつけて行くにゃ。だからしーっにゃ」
「いいな、ピアニカは。いつも猫の足取りだもんね」
「ふふーん。リヴィエイラの足は肉球だから、いつでも猫の足にゃ。というか、こうしてつけ始めてみると、にゃんだかあの占い師が、だんだん胡散臭く見えるような気がしてきたにゃ」
 結局お喋りが止まらない二人だが、順調に後をつけていくと、占い師は寺院の前で足を止め、その敷地へと入っていく。そして裏手に回りこんだ。
「寺院に入って行ったよ」
「生臭坊主と何か繋がりでもあるのかにゃ?これはいよいよ怪しくなってきたにゃ」
「生臭?」
「そうにゃ。坊主の相場は生臭って決まってるにゃ。いんちき魔法使いのところのキールだって、生臭坊主じゃにゃい。いや、あれはエロ坊主にゃ」
「キールはともかく、レイブンはいんちきじゃなくて、偉い魔法使いさまだよ」
「だって、あの老害じじぃ。いつも懲らしめるとかいって、あたしのことをただ鼠に変えるだけじゃにゃい!本当は大した魔法も使えないにょよ。老害拗らせただけのただのいんちき魔法使いにゃ」

 フォルテモたちも占い師に続いて寺院の裏手へと回った。寺院の裏は墓地へと繋がっていた。厩舎もあるが、近くの木に占い師の馬が繋がれていて、占い師の姿はなかった。戸口は奥と手前に二つあった。中央はきっと広い礼拝堂であるから、手前と奥は寺院の僧たちの寝室か、勝手口かとある程度の想像はできた。二人はそれぞれの取っ手に手を掛けてみたが、どの扉もすでに鍵が掛かっていた。
「やっぱり開かないね。これじゃ、あの占い師のことなんにも調べられないよ」
 ピアニカは羽耳をばさっと広げて聞き耳を立てるが、やはりどうにも聞き取れなかった。
「うーん、困ったにゃ。でも、生臭坊主と胡散臭い占い師の怪しい密会。臭うにゃ」

 二人は他に侵入口はないかと寺院を一回りすると、ちょうどアイリーンと妹のジャグリーンが寺院へやってきた。入り口で焚かれる篝火(かがりび)を数えていた。
「篝火が三つ。今回も少ないわね。この辺りは平穏だなんて言われてるけど、病や流産だって多いんだから。あたしもお父さんたちに、エドとはどうなんだなんて急かされてるし。なんとか生誕の儀で、健やかに育って欲しいわ」
 そう呟くと、アイリーンたちは寺院の中へと入っていった。
 そういえば、今夜は生誕の灯火という祭礼が行われると言っていた。フォルテモたちはなんだか珍しい祭儀でも始まるのかと、そちらを覗いてみることにした。
 いくつか小窓もあり、寺院の中も松明の灯りで明るく照らされていた。火のもたらす明かりと陰影が、どこか厳かに礼拝堂を包んでいた。適当な踏み台になるものを二人のエルフトは探し出し、小窓から中をこっそりと覗いてみた。


更新日:2019-11-29 21:31:11