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平成3年4月~平成24年2月 綾子に関する回想

 徳永清一郎と巻龍は兄弟である。
 しかし、二人に血縁関係は無い。
 簡潔に言ってしまえば、清一郎が龍の姉と結婚したことをきっかけに、二人は兄弟の関係になったのである。

 龍が生まれたのは一九九一年の四月のことである。
 その当時、龍の姉である綾子は小学六年生であった。
 小学校高学年の女の子と言えば反抗期に差し掛かる頃であり、綾子も例外なく「私はもう子供ではない」という思いを持っていた。
 どうすれば子供が出来るのかもとうに知っている年齢であり、両親の行動に嫌悪感を覚えたりもした。

 それでも、生まれてきた弟は可愛かった。綾子は生まれたばかりの弟を両親とともに可愛がった。
 そんな生活が、綾子が高校を卒業するまでの七年間続いた。

 綾子は東京の大学に進学し、一人暮らしを始めたが、長い休みに入ると新幹線で実家のある大阪に帰り、家族に会うのを楽しみにしていた。
 その中でも特に綾子にとって楽しみだったのが、弟である龍の成長を見届けることであった。

 大学に入学してすぐに、綾子は大学にあった演劇部に入部した。
 綾子が初めて芝居に触れたのは高校生の時であったが、大学生の舞台は高校生が作るものとは全く違っていた。
 綾子は学生演劇の面白さにのめり込み、そのまま三年生の冬までを過ごす。

 綾子が清一郎と出会ったのは、綾子が大学三年生だった二〇〇〇年の十二月であった。
 いつもの長期休暇のように新大阪行きの新幹線のチケットを取ろうとして、綾子はふとチケットを取るのを止めた。
 その正月、綾子は東京に来てから初めて、龍に会わないでおくことに決めた。

更新日:2019-09-16 22:13:13