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小説

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令和元年7月15日 8時 徳永清一郎・巻龍 自宅

 龍が作った朝食は完璧だった。
 味や栄養バランスについてはそれぞれの意見があるだろうが、洗い物をすることを考えれば、最低限の食器のみを使うように考えられている。
 その時点で、清一郎にとっては「完璧」と呼んで差支えないものだった。

 アクリルの毛糸で作られたたわしに食器洗い用の洗剤をつけて、皿を洗っていく。アクリルたわしは龍が毛糸を買ってきて作ったものである。
 無類の不器用である自分と違って、弟はこういったことが得意である。日常生活で使うようなちょっとした小物は、何でも自分で作ってしまう。
 このアクリルたわしも、趣味の一環で作ったものだと龍は言っていた。

 龍に言わせると、毛糸の細かな繊維が汚れを取り込むので、洗剤をたくさん使わなくてもよく汚れが落ちるようになっているらしい。
 洗剤を使わないことで節約になる上に、環境にも優しいんやで、と、前に龍が話してくれた。

 それでも、清一郎はそれまで使っていたスポンジと同じように、アクリルたわしにもたっぷりと洗剤をつけてしまう。
 龍はいつも、そんなに洗剤を使わんでええのに、と言うが、少ない洗剤ではどうも汚れが落ちたような気がしないのである。

「兄貴、他に何か買うて来るもんってある?」
「一応、メモにまとめてある。結構量があって重いかもしれないから、自転車使いな。鍵は持ってるか?」

 身支度を整えて戻ってきた龍に買い物メモと必要なお金を渡して、自転車の鍵を持って行くように伝えた。

 蘭鋳椿偏屈堂が位置する好日通り商店街では自転車の通行が禁止されているが、細身の龍には持ち切れないであろう大量の荷物を入れて、押して歩く分には問題ないだろう。

「じゃあ、行ってくるわ」

 弟を見送ると、清一郎は自室から青い紙袋を、浴室から洗面器を持ち出して洗面所に入った。
 洗面器に湯を溜めると、その中に洗剤を溶かす。いつも使っている洗濯洗剤だけでなく、酸素系漂白剤も使って洗う。
 どちらも、清一郎が働くフェスタ株式会社が製造している商品であった。

 相変わらず、Tシャツからは香水のような匂いがしているのだ。洗浄力の高い漂白剤も一緒に使うと、洗濯物についている匂いが落ちやすいと、清一郎は同じ会社で働く技術者から聞いたことがあった。

更新日:2020-01-21 01:01:48