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覇道は静粛に……ではなく激動に訪れる

 あの戦いから一年が経ちました。マーレイドではコスモス及びケイオス共に遅咲きですが先のシルバーピープルに依って受けた傷跡の修復が進んでいます。私の方は後で説明するとしてもコスモスでは新皇帝『イデオ・サジタリア・アドヴァニア十五世』の治世の下で国民は一心不乱に復興作業に従事していきます。其れでも既得権益に縋りつく方々は依然として復興の妨害をして往きますが……其れでも国民の心は一年前が二度と起こらないように復興作業の方へと注心します。其の事には私も安心しております。

 ケイオスの方では、一年前と変わった点が在るとすれば『ルドルフ・ウォルバーン』さんが帝国議会の使節員に選ばれてビーストトルーパーと和平を結びに向かっております。普通なら使節員の命も考慮して彼を派遣するのは控える傾向に在ります。其れは彼がビースト戦士最大の敵として怨嗟の対象として憎まれている事を考えれば、です。けれども、今のビーストトルーパーは去年の事も在ってルドルフさんを迎え入れる以外に在りません。政治の事は詳しくない私でも何となく察する事が出来るとするのでしたらきっと『ドライパレス』を根城とする『過激派』への牽制の為でしょうね。ビーストトルーパーも一枚岩では在りませんので如何しても意地を貫けない情勢に在るのでしょう。

 そんな風に万全とは行きませんが、コスモス及びケイオス共にほぼ順調な運びで希望へと踏み出してゆくのです……「暇だなあ、最近はあ」一部の不安要素は除きまして、ですが。

 其の不安要素の一つは……「取り敢えずあの盗賊野郎の自宅に在る冷蔵庫から何か御摘みでも取り出して何時も通りエーテルラジオの下らんパーソナリティー共の話でも聞いて退屈潰しでもしよっか」彼の名前は『ヴェイダー・クロノス』--此の物語の主人公です!

 梯子階段を上り、天井に在る扉を開けようと……「開かない、なあ。あの野郎、俺を閉じ込めに来たな!」きっと今迄のツケが回ったのだと思いますよ!

 そんな時、何かの騒ぎを……「ん? 良くわからんが、扉の先に在る騒音がこっち迄響いているなあ。どんな会話内容なのか聞きたい。だが、はっきりと聞こえるには俺は其処迄地獄のような耳じゃねえな。うーん、遠過ぎる」扉の先で聞き付けるヴェイダー。

 其れからヴェイダーは……「面倒だ、出よ……アンリミテッドシールド!」片方の自由な手を下の方に翳して何かを瞬間転移させて呼び出しました--其れは去年、ヴェイダーが使っていたあのアンリミテッドシールドです。

 其れを使って扉の鍵を物理攻撃の名の下に叩き壊した彼は奥の方へと出て、其の侭騒音の原因を探りに扉を開けようと走って……「オイ、ヴェイダー……やっぱりお前は鍵を壊して出て来たな!」行こうとすると在る人が扉を開けて彼を迎えに来ました--其の方の名前は『エイガー・マイロード』さんです。

「話は早いな。何が在った……」「待て、今はホロモニターに集中しろ!」エイガーさんが利き手の親指で指し示す方角に何かが映るのをヴェイダーは視認--其れは彼にとって信じられない光景でも在ります!

「……野郎、生きていやがったか。あれだけぶっ叩いて更には心臓部に風穴を開けてやった、筈だったんだけどな。仮に、何か仕込んでも……あれだけの傷じゃあ無事では済まない筈だったのに!」

「だが、あいつはああやって去年の事なんか全然忘れている位に腹の立つ笑みを浮かべてやがるぞ!」

「んで、どんな内容だ? 途中から聞いているんだから全然何の事やら湧かんね……あ、放送が終わった!」

「其れを此れから伝えようと思うんだ。まあ、鍵を御丁寧にぶち壊してくれた序だ……たっぷりと演説内容を伝えてやるよ!」

「殺意を籠めるなよ。俺が何を……」「此の一年、何で恩着せがましい程に俺がどんな目に遭ったのかを理解しやがらねえのが益々殺意が湧くぜ!」エイガーさんは去年と比べてヴェイダーに凄く敵意を剥きだしております--『パーム・アルメダス』さん程では在りませんが!

更新日:2019-09-02 05:14:47

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