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 港に着いたヴェイダー、其処で何かが吸い上げられるような感覚に襲われる……「こりゃあ何だ? あのお花畑は何をやらかしたんだ?」奴は其の感覚を取り払う方法として銀眼の使用を過った--だが、何度も使用したリスクから既に視力の極端な低下を恐れたが故に抑える事に。

「あの良くわからん竜巻みたいなのが出て来てからわし等の体が軽くなる感覚は何だろうねえ?」

「軽く成る? 重く成るの間違いじゃねえか?」ヴェイダーは『マーブルブレイク』の意味を知り始める。「若しや? ジャン・ロドリックスが経験したのは此れの事か?」

「ジャン? ロドリックス? 若いもんは……って、危険だよ。下手に山を登ろうとするのは!」

「五月蠅い、俺の邪魔をするんじゃねえ!」

 此の時のヴェイダーに『止まる』という三文字はない。下らない理由を実行するには未だ未だ其れで十分だった。無論、止まらないのは奴だけではない。

「済まないね、其処の先生や。如何やら彼は行くようだ。吸い取られるかも知れないのに……何で止まらないんだろうか?」

「一度進んだ道は絶対に引き返さないのだろう。或は一度形成された間違いを今更修正する柔軟性を備わらないのだろう。人間とはやり直しが利かなく成ると間違いでも最後迄貫こうとする頑迷さを備える。奴も私も其れに囚われている。待っているのは確実な死だけなのに……だが、若しも確実な死を覆す何かが在るとすれば」私も荒野に放り込まれる事を知りつつも止まる事を知らない。「其れはきっと後に続く者達への指針に成るかも知れない……迷走の果てに見える光明を我々は信じて突き進もうか!」

「先生、先生も行くんですか?」

「何、最低限の仕事を熟さずして如何するべきか……」今の私は監視する側さ。


 山を登る十五分間……「さっきからホークのうざさにストレスが溜まって仕方ねえ!」何度も回復アイテムを盗まれる事に苛立ちを募らせるヴェイダー--ホークとカンガルーという群れでもやはり嫌な物は嫌なのだろう。

「火炎盾転……ちえ、十発しか当たってねえ。カンガルーに即死攻撃は……ウググ、二種類のラッシュはどれも俺に疲労感を与えるからうざいんだよ!」

 盗みのホークと頑丈さとラッシュのカンガルーに何度も苦戦しながらもヴェイダーは山を登り続ける--出来る限り戦闘は避けつつ、皇女殿下の居るロープを目指して。

 其れからヴェイダーは漸く辿り着こうと足を踏み入れようとした時に……「後ろ……居ないか、一瞬あの笠野郎の気配を感じたような?」警戒心の高い奴だ--私だろうと監視される事を其処迄好きじゃない様子。

「あの神を騙る連中は既に念を押したしな。だから此の気配は二重スパイなんてやっているあいつ以外に居ないと思ったんだが。まあ、気にするべきは此の吸い取られるような感覚だろう。使用して何とか成るか? いや、面倒だ。殺した方が楽に決まっている。何を迷うか……俺め。俺の目的はバルマーの打倒で在ってあのお花畑を仕留める事ではない」と言いつつも次のように付け加える。「だが、俺の命の為にも奴は今度こそ殺してやるか……何れ殺そうと思ったんだ。其れがやって来たんだよ」

 ヴェイダーに迷いはない。というよりも迷いを抱く理由がない。奴は何時だってエゴイズムの塊--悪の美学に不純物は不要!

           『エンプレスデイ・マーブルブレイク』に続く……

更新日:2019-09-07 17:18:00

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