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ヴェイダーの独り旅 後篇

 視点はサラマン市の在る市長に映す……「予定通り海賊討伐に乗り出しましたか。だったら話が早いですね、其処で皇女殿下を惹き付けるのです」其の男は或る者と連絡を取っていた--恐らく逐一状況を知りたいのだろう。

「ふう」通信を終えた男は部屋の中に居る不気味な白装束に尋ねる。「何者ですか、貴方は!」

「トサガナ、お前が忌避する者。我が名は『タママユ・イワクラ』……神に仕える者なり」

「『タママユ』大司教……帝国最大の圧力団体『プラネイト教会』の生きる永世大司教にしてマーレイド裏の支配者と称される男がこんな所迄!」

「何、取って食いはしない。我々は脅しを掛けて此処に帝国兵を常駐させた……少々、コソ泥を潜入させてしまったのは反省する」

「まあ、良くわかりますが何故帝国兵を常駐させるおつもりですか?」

「奴がもう直ぐ貴様を殺しに乗り込んで来る」

「奴? いや、グランドマスターのバルマリィ・ハーデス元帥閣下は未だ未だ僕を必要とする筈ですよ。リーン皇女殿下につきましては今、アルケール市に向かっているからそんな可能性が在りません。懸念材料のウォルバーン元下院議員も有り得ません。ケイオスに拘束された状態だと……待てよ、まさかヴェイダー・クロノスが生きているというのか!」

「中々状況整理が素晴らしいな、トサガナ。元弁護士だけ在って一つずつ潰すのが得意か」

「為らば話が早い。奴が来たら間違いなく僕は殺される。此れは安全保障上の問題だ。直ぐに此処から逃げ出さなければ……」「其の必要がないな、此の一匹の『ジャージーデビル』さえ在れば瞬く間に悪魔は悪魔に殺されるだろう」何時の間にか市長室内に悪魔が潜んでいた--トサガナも其れには鍔を喉に通さなければ恐怖心を抑制する事もなかろう。

「悪い冗談だろ? 何で市長邸から逃げ出すのは阻むんだ?」

「貴様はそうゆう役割しか与えられない。脚本の外に出たら貴様は只のモブキャラと変わらない」

「言っている意味がわかりかねますね、大司教様。公人の安全の為には警備の厳重化の他に適切な逃亡ルートを作り市長邸の外に在る隠し避難所に避難する事も大切で……」「だから其れは不可能、貴様は市長邸より外に出たら其れこそ脚本より外に入りモブキャラに没する。此の意味を重々理解するのだ」私でさえもタママユの言ってる事は理解の外に在った--脚本の外……ドラマの話は他所でやって欲しい物だな。

「ええい、僕が市長邸より外に出られないだって? 馬鹿も休み休み……」「待て、見るのだ」タママユに頭部を掴まれたトサガナは其処で{シンジツ}に遭遇する!

「なmdけjふぃjうぃおgfjろえいgれうgふfgる……そ、そんな。お、俺が紛い物だって!」

「わかっただろ? 貴様は記憶の世界に存在した部落出身の弁護士上がりをベースに作られたトサガナ・ツイタ・アンダーブリジという名の役者だ。其の運命に従う事でしか生き残る道はない」

「あれは悍ましい。あんなのはもう……の、残ってやるぞ。か、返り討ちに遭わせて、や、やるぞお!」

 タママユは一体何を見せたんだ? トサガナを其処迄させてしまう何か……其れだけは確かだろうな。

更新日:2019-08-16 08:12:14

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