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 ヴェイダーはシナップスの森に出てからは何処へ向かえば良いのか悩む……「そうだ、此の『コネリの万年筆』と此れ此れ『コレキヨアーマー』を忘れていたぜ」其処で奴は通り掛かりの旅人に声を掛ける。

「そ、其れは彼の有名な『コレキヨアーマー』……何処で其れを入手したんだ!」

「そんな事は良い、重要なのが俺は一刻も早く首都に入りたい。だが、此の見馴れだ。帝国兵共は俺を怪しい奴だと疑ってかかるだろう」

「まあ其の邪悪そうな眼付きから……」「死にたいか、俺は冗談が大嫌いなんだよ」自分が冗談言うのは正しいと勘違いする時点で情状酌量の余地もないな。

「でも偽造は直ぐバレるぜ。あんた、セキュリティを侮っているな」

「いや、侮っていない。此の万年筆を持参すれば短時間の効果も即永続時間へと様変わりするんだよ」

「其れ……やばい奴だろ? まさか例のヘンテイ新聞工場襲撃事件の犯人は……」「モンキーとゴリラの餌に成りたい、と?」悪党は脅しの使い方を心掛ける--故に旅人は偽造に加担するしかない!

 そうゆう訳で旅人は自分の将来に不安を抱きながらも其の場を後にして最寄りの業者を捜索してゆく。逃げるなら何処迄も追っ掛けそうな極悪人と仮に引き受けても偽造の罪で牢獄行きは避けられない……其れでも最高刑で死罪に成らないだけ犯罪に加担する方が身の為だと判断するのは命を大事にする者達の行動原理で在ろう。

 さて、下準備が得意なヴェイダーは此の後何をするのか? 其れはモンキーとゴリラの群れに苦戦しつつもシナップスの森を抜けて行く。だが、ヴェイダーの進むべき進路は殿下達の進路とは真逆。正確な真逆ではないが、北西の方角に真っ直ぐ進んで首都へと乗り込む算段。彼は『シナップス街道』に入って一夜を過ごす気で居た。

「ふざけるなよ、モンキーの分際が。俺を誰だと思っているんだ……」只の極悪人が何を口にしようともモンスターの心に響かない--苦戦しつつも満身創痍の肉体で森を抜けて行くヴェイダー。

 森を抜ける迄に一時間は掛からない。けれども、幾らベリーやおにぎりで痛みの緩和やスタミナの補充を図っても落下の衝撃で受けた傷はそう簡単に癒える物ではない。何度も膝の痛みに足を止め、腰の痛みに背を木の幹に凭れて姿勢を安定させる等奴が善人だったら恐らくは同情の念を禁じ得ないだろう。だが、極悪人は精神力が脆弱だという一般的な指標を跳ね返すように奴は怨念のエネルギーを放ちながら其の激痛に耐えて耐えてそして森を抜けるという憎たらしい事を果たしてゆく。

「イデデデ、膝と腰だけは全然慣れねえ。他は何とか誤魔化せるのに……脳内麻薬も大した働きを見せねえなあ!」既に脳内麻薬は他の痛みすら感じさせない程大量に放出される。「弱点は今一、感覚がおかしくなる点だろうな……此れだけ感覚が変に思っても腰痛や膝関節の激痛だけは誤魔化さねえのかよ!」

 さて、此処『シナップス街道』では不思議な事にモンスターは出没しない。理由は在るだが、其れを説明する余裕はない。

「少し気楽に成れる所迄移動しねえと!」

 ヴェイダーは十四分後にキャンプ地へと赴き、其処で偶々通り掛かった名医に依って何とか通常の状態へと回復する……勿論、私の事ではない。

更新日:2019-09-07 15:14:54

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