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ヴェイダーの独り旅 前篇
或る男に悲しい過去はない。或る男に良心は持たない。或る男に在るとするなら一転の悪意。其れは自分を酷い目に遭わせた人間、事物に復讐? 否、自分の正義に何の疑いもない? 否、常に唯一つ……「俺の思った事が此の世を動かす」そんな独り言を機に極悪人は復活する--其処は極悪人が放棄されるに相応しい塵が大量に廃棄された危険地帯……そして極悪人の耳には下水の流れる音が聞こえる。
「イデデデ、酷い目に遭った。一体俺が何をしたって言うんだ」奴に反省の色はない。「こんな目に遭わせた恨みは百倍にして返してやる」
起き上がろうにも落下の衝撃で全身に痛みが走る。立ち上がろうにも寝転がりながら出ないと立ち上がれない。そして膝を乗せながら座る姿勢に成った時に今度は……「何だよ、膝も、何で俺があ!」顔を引き攣る程の激痛が極悪人を襲う--先程迄独り言を止めていた男にとって言葉とは最早痛み止めの手段に過ぎないのか?
其れから一時間を掛けて痛みに悶えながらも人類が生まれてからずっと持っていた泣き叫びの技術を以って痛みと格闘し、遂に直立姿勢を採る事に成功する。此れは世の為にとって嬉しい事なのか、其れとも悲しむべき事態なのか? 何れにせよ、奴には一切の同情は不要。今迄のツケは未だ未だ払い足りない。奴が今にも目から涙を流すのは悔しさから出たのか? 其れとも痛みの壮絶さの余り、軽減法の一種として出てしまったのか? 何方にとっても一刻も早い悪への鉄槌を願う者達には知りたくもない情報だろう。
「ハアハアハア、此の先を抜けると……僅かにモンスターの気配がする。折角、生き延びたのに残党狩りかよ。俺の何がいけないんだ」
未だ未だ独り言が続く極悪人。たった一人だから此の世の塵と一緒に並べても何処が違うのかわからない男の独り言の理由を誰が共感するというのか? 恐らく共感出来るのは余程の馬鹿か歴代皇帝の一人の肖像画を焼いて『何代前だから構わんだろう』と言ってる奴か障碍者を政治利用するテロリストか或は……何れにせよ、此の極悪人に共感する者は一人も居ないと断言しておこう。勿論、此の極悪人は共感されるのを酷く嫌う為に擦り寄る者達の意見が在っても聞き入れはしないだろう。
「漸くわかって来た、此処は……地下水道だな。だったらスラッグ相手に炎神剣で行けば良い!」
とはいえ、極悪人故に頭の良さは実に憎たらしい。たった一人でも状況を打破する為には如何すれば良いのかを理解する。優位だという情報が入れば即座に其れを利用する。だからこそ数多の世界に極悪人が絶滅する事が容易くないのだ。こんなさっき迄塵が放棄された場所で塵との違いが判らない所で眠っていたにも拘らず既に激痛も気にしないレベル迄回復して……「デデデ、今度は腰痛かよ……ジジババと一緒かよ、俺はあ!」失礼、誤解だった--未だ完全回復には程遠い!
其れから時々技名を叫んだり、何か気付いた時以外は独り言を避けつつも其の極悪人は不幸な事にヘドロの臭いに相応しい地下水道から何と安らぎと浄化の森『シナップスの森』へと這い上がってしまうとは--全く、神々は極悪人を甘やかす傾向に在るようだな……其れじゃあ何時迄経とうとも悪に依って不幸に成った遺族が絶えないだろう。
「相変わらず此の森は吐き気がするぜ」悪とは我々とは逆に心地良さを気持ち悪さに変換する傾向に在る。「全くあのお花畑を今にも殴りてええ、どっかサンドバックか何か居ねえかなあ?」
さて、此の悪党の名前か? 奴の名前はヴェイダー・クロノス……悲しい事に此の物語の主人公。
「イデデデ、酷い目に遭った。一体俺が何をしたって言うんだ」奴に反省の色はない。「こんな目に遭わせた恨みは百倍にして返してやる」
起き上がろうにも落下の衝撃で全身に痛みが走る。立ち上がろうにも寝転がりながら出ないと立ち上がれない。そして膝を乗せながら座る姿勢に成った時に今度は……「何だよ、膝も、何で俺があ!」顔を引き攣る程の激痛が極悪人を襲う--先程迄独り言を止めていた男にとって言葉とは最早痛み止めの手段に過ぎないのか?
其れから一時間を掛けて痛みに悶えながらも人類が生まれてからずっと持っていた泣き叫びの技術を以って痛みと格闘し、遂に直立姿勢を採る事に成功する。此れは世の為にとって嬉しい事なのか、其れとも悲しむべき事態なのか? 何れにせよ、奴には一切の同情は不要。今迄のツケは未だ未だ払い足りない。奴が今にも目から涙を流すのは悔しさから出たのか? 其れとも痛みの壮絶さの余り、軽減法の一種として出てしまったのか? 何方にとっても一刻も早い悪への鉄槌を願う者達には知りたくもない情報だろう。
「ハアハアハア、此の先を抜けると……僅かにモンスターの気配がする。折角、生き延びたのに残党狩りかよ。俺の何がいけないんだ」
未だ未だ独り言が続く極悪人。たった一人だから此の世の塵と一緒に並べても何処が違うのかわからない男の独り言の理由を誰が共感するというのか? 恐らく共感出来るのは余程の馬鹿か歴代皇帝の一人の肖像画を焼いて『何代前だから構わんだろう』と言ってる奴か障碍者を政治利用するテロリストか或は……何れにせよ、此の極悪人に共感する者は一人も居ないと断言しておこう。勿論、此の極悪人は共感されるのを酷く嫌う為に擦り寄る者達の意見が在っても聞き入れはしないだろう。
「漸くわかって来た、此処は……地下水道だな。だったらスラッグ相手に炎神剣で行けば良い!」
とはいえ、極悪人故に頭の良さは実に憎たらしい。たった一人でも状況を打破する為には如何すれば良いのかを理解する。優位だという情報が入れば即座に其れを利用する。だからこそ数多の世界に極悪人が絶滅する事が容易くないのだ。こんなさっき迄塵が放棄された場所で塵との違いが判らない所で眠っていたにも拘らず既に激痛も気にしないレベル迄回復して……「デデデ、今度は腰痛かよ……ジジババと一緒かよ、俺はあ!」失礼、誤解だった--未だ完全回復には程遠い!
其れから時々技名を叫んだり、何か気付いた時以外は独り言を避けつつも其の極悪人は不幸な事にヘドロの臭いに相応しい地下水道から何と安らぎと浄化の森『シナップスの森』へと這い上がってしまうとは--全く、神々は極悪人を甘やかす傾向に在るようだな……其れじゃあ何時迄経とうとも悪に依って不幸に成った遺族が絶えないだろう。
「相変わらず此の森は吐き気がするぜ」悪とは我々とは逆に心地良さを気持ち悪さに変換する傾向に在る。「全くあのお花畑を今にも殴りてええ、どっかサンドバックか何か居ねえかなあ?」
さて、此の悪党の名前か? 奴の名前はヴェイダー・クロノス……悲しい事に此の物語の主人公。
更新日:2019-09-07 15:13:17