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ラムネの頃から観音は反省せずに獣を壊す
光には影が在る。其れは此の男にも言える事。彼は生まれつき目が見えずに其れを理由にエーテルサングラスが放つ闇を見て人の形を捉えて来た。でも、彼の話す人間の姿と他人が話す人間の姿は何時だって乖離し……彼は悩み続ける。
『良いか、ケストナル。お前は代々のリーブル家の男として私の地盤を引き継ぐ。だが、地盤を引き継ぐだけでは今後も政治屋としてやってはいけない。カルロスの七光りではやってはいけない。其処で、だ。私が死んだら彼の下で学ぶのだ。私の子供に相応しい政治屋として、リーブル家の立派な男児としてな!』
父『カルロス・リーブル』は汚職に塗れた政治屋。常に闇献金問題の真っ只中に在った。其れでも逮捕されずに最後迄己の利益追求の為に邁進し、大往生。享年七十八。実は其のカルロスは後継ぎが欲しかった。彼の父は様々な女と性交して迄子供を欲した。やがて愛人の一人が子を産むと彼女に多額の生活費を充てて彼を引き取った。だが、其の愛人は彼と引き離される事を嫌とも言わずに其の報酬を有難く受け取る。何故なら彼は生まれつき目が見えない為に愛人にとって其れは幸運を呼ぶ以外の何物でもなかったのよ。そんなカルロスは最初彼の全盲を酷く憎んだ。だが、待望の跡継ぎ故に死なせればリーブル家は其処で絶たれる。故にカルロスは彼を大事に育てた。帝王学を仕込んだ。更には政治屋として何が在っても屈しない心の在り方を徹底させた。然もカルロス自身が汚職に塗れた政治屋故に彼は成人の時には喧嘩が多少弱くても屈しない精神を持つに至った。
カルロスの遺言に従って或る政治屋の下に働き始める。其の政治屋は常に体当たりを好み、更には歯に衣着せぬ発言で物議を醸し乍らも着実に政治的な権力を積み上げて来た。
『そうか、あのリーブル議長の……にしても不思議だな』
『如何してそうお思いですか?』
『未だ全てを語ってないだろう、話は最後迄聞け。良いか、ケストナル。私が不思議だと思ったのはあのリーブル議長が子供を大切に育てているって点さ!』
『其れの何が不思議とお思いなのですか?』
『言っちゃあ悪いが、彼は女を女とも思わない如何しようもない汚職政治屋だったさ。結婚回数十二回、内離婚した妻から訴えられた件数は何と三十にも上る。然も生きている内に決着が付いた件数は何と……三件。とてもじゃないが、尊敬から遠く離れていると思わないか!』
『其れと子供を育てる事が如何繋がるのですか?』
『其処だよ。女を大事にしない男が如何ゆう訳かやっと出来た一人息子を大事に育てているのが不思議なんだよ。老いて情が湧いてしまったのか? 其れとも子供の前では愛情を注ぐ物なのかって話さ』
『そうゆう話は子を持つ先生が口にするべき事柄ではないのですか? 既に死んだ人間の事を話したとして何の利益が貴方には在るのですか?』
『だろうなあ、お前はそう見えて仕方ないのか。だがな、ケストナルよ』
『唾が飛んで来ました。少し燥ぎ過ぎです』
『聞け、ケストナル。そんなカルロス・リーブルとは気が合う仲だった。カルロスから様々な事を学ばせて貰った。私は汚い事も碌に出来ない人間だからこそ利益を考えずに突っ走る事を何度も悩んだ事が在る。だからこそ私は議長の子供としてお前を引き取ったのではなく、お前を偉大なる政治屋の素質を見込んで引き取ったのだ。お前なら何れは私を超えて此の帝国を更に発展させる礎に成れると信じて!』
『出来ませんね。私には父から受け継いだ地盤と貴方のような類稀な天才政治屋のように上手く行きません』
『行くさ、ケストナル。私に付いて来い……お前には国会議員の全てを叩き込んでやる!』
そうして彼は恩師の下で八面六臂の如く働き、やがては伝説の政治屋ルドルフ・ウォルバーンの影として政敵達から畏怖される存在と成った……だが!
『此処でお別れです、先生』
『ケストナルウウウウウウ!』
--時は現在……「ゲホゲホ……来たか、ビーゴ大尉」ヒューマニーさんに叩き起こされたケストナルのおっさんは夢から覚めた。
「自分でやって於いて眠るな!」
「其れよりも……奴は動いたか?」
「ああ、そうだな。後は奴に任せて我々は此処を離れましょう!」
恩師を裏切った彼は止まらない--果たして胸の内に秘める物とは一体何なのか!
『良いか、ケストナル。お前は代々のリーブル家の男として私の地盤を引き継ぐ。だが、地盤を引き継ぐだけでは今後も政治屋としてやってはいけない。カルロスの七光りではやってはいけない。其処で、だ。私が死んだら彼の下で学ぶのだ。私の子供に相応しい政治屋として、リーブル家の立派な男児としてな!』
父『カルロス・リーブル』は汚職に塗れた政治屋。常に闇献金問題の真っ只中に在った。其れでも逮捕されずに最後迄己の利益追求の為に邁進し、大往生。享年七十八。実は其のカルロスは後継ぎが欲しかった。彼の父は様々な女と性交して迄子供を欲した。やがて愛人の一人が子を産むと彼女に多額の生活費を充てて彼を引き取った。だが、其の愛人は彼と引き離される事を嫌とも言わずに其の報酬を有難く受け取る。何故なら彼は生まれつき目が見えない為に愛人にとって其れは幸運を呼ぶ以外の何物でもなかったのよ。そんなカルロスは最初彼の全盲を酷く憎んだ。だが、待望の跡継ぎ故に死なせればリーブル家は其処で絶たれる。故にカルロスは彼を大事に育てた。帝王学を仕込んだ。更には政治屋として何が在っても屈しない心の在り方を徹底させた。然もカルロス自身が汚職に塗れた政治屋故に彼は成人の時には喧嘩が多少弱くても屈しない精神を持つに至った。
カルロスの遺言に従って或る政治屋の下に働き始める。其の政治屋は常に体当たりを好み、更には歯に衣着せぬ発言で物議を醸し乍らも着実に政治的な権力を積み上げて来た。
『そうか、あのリーブル議長の……にしても不思議だな』
『如何してそうお思いですか?』
『未だ全てを語ってないだろう、話は最後迄聞け。良いか、ケストナル。私が不思議だと思ったのはあのリーブル議長が子供を大切に育てているって点さ!』
『其れの何が不思議とお思いなのですか?』
『言っちゃあ悪いが、彼は女を女とも思わない如何しようもない汚職政治屋だったさ。結婚回数十二回、内離婚した妻から訴えられた件数は何と三十にも上る。然も生きている内に決着が付いた件数は何と……三件。とてもじゃないが、尊敬から遠く離れていると思わないか!』
『其れと子供を育てる事が如何繋がるのですか?』
『其処だよ。女を大事にしない男が如何ゆう訳かやっと出来た一人息子を大事に育てているのが不思議なんだよ。老いて情が湧いてしまったのか? 其れとも子供の前では愛情を注ぐ物なのかって話さ』
『そうゆう話は子を持つ先生が口にするべき事柄ではないのですか? 既に死んだ人間の事を話したとして何の利益が貴方には在るのですか?』
『だろうなあ、お前はそう見えて仕方ないのか。だがな、ケストナルよ』
『唾が飛んで来ました。少し燥ぎ過ぎです』
『聞け、ケストナル。そんなカルロス・リーブルとは気が合う仲だった。カルロスから様々な事を学ばせて貰った。私は汚い事も碌に出来ない人間だからこそ利益を考えずに突っ走る事を何度も悩んだ事が在る。だからこそ私は議長の子供としてお前を引き取ったのではなく、お前を偉大なる政治屋の素質を見込んで引き取ったのだ。お前なら何れは私を超えて此の帝国を更に発展させる礎に成れると信じて!』
『出来ませんね。私には父から受け継いだ地盤と貴方のような類稀な天才政治屋のように上手く行きません』
『行くさ、ケストナル。私に付いて来い……お前には国会議員の全てを叩き込んでやる!』
そうして彼は恩師の下で八面六臂の如く働き、やがては伝説の政治屋ルドルフ・ウォルバーンの影として政敵達から畏怖される存在と成った……だが!
『此処でお別れです、先生』
『ケストナルウウウウウウ!』
--時は現在……「ゲホゲホ……来たか、ビーゴ大尉」ヒューマニーさんに叩き起こされたケストナルのおっさんは夢から覚めた。
「自分でやって於いて眠るな!」
「其れよりも……奴は動いたか?」
「ああ、そうだな。後は奴に任せて我々は此処を離れましょう!」
恩師を裏切った彼は止まらない--果たして胸の内に秘める物とは一体何なのか!
更新日:2019-09-05 19:28:30