• 65 / 128 ページ

パパは大変!

「あれ? コナンは?」

風呂から上がったばかりの新一が寝室に顔を覗かせると、
いつもベッドのど真ん中を陣取って寝ている息子の姿がない。

「コナンなら優作さんと有希子さんの部屋へ行ったわ。
今夜はアイリも一緒に四人で寝るそうよ」

どんな時でも大好きなママを守るナイトのように志保の隣に寝ている息子が……。

「へぇー、珍しいな」

子供達は久しぶりのおじいちゃんとおばあちゃんの帰国がよほど嬉しいらしい。

「ええ、今夜は有希子さんが絵本を読んでくれるそうなの。
コナンったら、嬉しそうにゴリしゃんまで連れて行ったのよ。
ゴリしゃんにも聞かせるんだって……」

有希子は元女優だけあって絵本の読み聞かせもプロの腕前。

LAで同居していた頃は子供たちによく絵本を読んで聞かせてくれた。

けれど、コナンは小さすぎて全く覚えていない。

だから、有希子に読んでもらおうと絵本を選んで楽しみに待っていたのだ。

「でも、迷惑じゃないかしら? 
ゴリしゃんは置いていきなさいって言ったんだけどね」

「いいんじゃねー? 向こうはベッドも広いし、ゴリしゃんはコナンの大事な相棒だろ?
父さんも母さんも久しぶりに孫たちと一緒に過ごせて喜んでるよ」

優作と有希子の寝室にはダブルベッドが二台並んでいる。

一方、新一たちはセミダブルのベッドを合せて一台として使っていた。

新一がベッドに入ると、彼を待っていたかのように志保が両手を伸ばす。

彼女を抱きしめ、何度か軽くキスを交わすと、
久々の我が家のベッドに大きく羽根を伸ばすように身体を横たわらせた。

幼児一人とゴリラが一匹いないだけでベッドが広々としている。

何とも言えない解放感に包まれながら、新一はゆったりとした気分で静かに瞼を閉じていく。

このまま気分よく眠ってしまおう、しかし────

更新日:2021-05-23 23:33:51

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

【特別編】 未熟なふたり ~ 工藤一家のクリスマス