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落ちこぼれメアリー①

 「ヨイッショヨイショ」
 備え付けのクローゼットからプリンと白いズロースを出しながら、何かを引っ張り出しているメアリーに、呆れ顔のチャーリーが声を掛けます。
 「おい、でかい尻突き出して、さっきから何をしてんだよ」
 「魔法の道具が引っ掛かっちゃって、なかなか取れないのよ。うーん」
 渾身の力で引っ張ったメアリーが、小さな悲鳴とともにチャーリーへ倒れてきました。
 「あっぶねーな」
 「あいたたた」
 腰をさするメアリーの横で、ちょこまかと動くチャーリーが、文句を連ねるのは、毎度のこと。
 「何だよこの大荷物。大抵魔女ってのは身軽に箒一本で動くもんじゃねーのか?」
 「誰がそんなこと、決めたのよ」
 心外という顔で言うメアリーに、チャーリーは大袈裟なため息を一つ吐いて見せます。
 「決めたとかそう言うのじゃなくってよ。常識じゃねーの」
 「常識ですって」
 メアリーが声をひっくり返しながら抗議を始めます。
 「あなたは何も分かっていない」
 辺りを見回しながら言うメアリーの足から這い上がったチャーリーが、肩で不満の声を上げます。
 「何がだよ」
 いちいち大げさに驚くメアリーにチャーリーはうんざり顔です。
 「ここに来た目的よ」
 「それはあれだろ。魔女の修行ってやつで、人間との共存生活で学ぶって、俺、何かの本で読んだことがある」
 「チッチッチッチ」
 片手を腰に当て、メアリーは澄ました顔で指を振って見せます。
 「何だよその顔」
 「これだから」
 「これだからなんだよ」
 「私を誰だと思ってんの、そんじょそこいらにいる魔女とは違うわ。メアリービーよ。魔法学校落第して、再入学試験を受けるため、ここへやって来たの。あとがないわ。これに合格できないと」
 そんなこと、自慢することかよと思いつつ、ここは話しを合わせるのが一番。
 ここに来る前の一週間、チャーリーはそのことを嫌と位ほど刷り込まれいました。
 やれやれです。
 ぷんとしたかをするメアリー。
 良からぬことが怒らなければ良いのですが……。

更新日:2019-04-16 10:29:43

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