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・隣の部屋の恋愛事情4

「ただいま~」
玄関のドアを開けて独り暮らしの
アパートの部屋に声をかける。
当り前だが返答はない。
ふぅ、今日も疲れた。
あたしは手早く服を脱いで
シャワーを浴びて部屋着に着替える。
シャワーを浴びている間に洗濯機を回している。
あたしは乱雑なのは嫌いだ。
どんなに疲れていても、雑用は早めに片づけ
それから一息いれる事にしている。
ワンコインカップの冷や酒とつまみを片手に
ちゃぶ台の側の座椅子に座る。
「ふぅ~」
喉越しにヒンヤリしたお酒の感触が気持ちいい。
そんな時、隣の部屋との境の壁から
ギターの音が聞こえる。
ポロンポロン。
優しい音色だ。
穏やかな夜の海。地中海の白いホテルで
恋人達がワイン片手に語らいあうような
穏やかでさざ波が聞こえてきそうな。
あたしはその音色に身をまかせながら
今日一日の疲れを洗い流す。
すると突然、音が止む。
スマホ越しだろうか。誰かと話しているみたいだ。
数分して話し声が止む。
そしてギターの音が始まる。
今度は一転して激しい調べ。
恋人達が激しい波に別たれ
手と手が離れるような胸をかきむしられるような音。
今の電話は分かれ話だったのだろうか。
あたしはしばし音色の激流に身を任す。
そして音が突然止んだ。
ダンっ
壁を殴る音がする。
たった1回
その一回が彼女への別れの挨拶だったのだろう。
ギターがまた優しい音を奏でる。
悲しみを含んだ優しい音色。
切々と語りかける澄んだ調べ。
・・・ピーピーピー。
洗濯機が止まった。
あたしは洗濯ものを干しに立ちあがったのだった。

更新日:2019-04-04 19:19:49

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