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激動のマーレイド 前篇

 あたしの場面よりも前に……「『タウロス』の情報通り奴等は再始動したか」サングラスのおっさんが何かの転送陣に乗って転移を始めようとしているわ--生きていたのね、生身の人間なのに。

「ええ、トーラレズ少佐の情報に依りますと既にキャンズ中尉、レイオーン大佐……いや、此処は一佐か。其れとキャプリコヌス少尉が既に別の転送陣を使用して『グランドマスター』に到着しました」

「十三星座中たったの三星座……いや、閣下を入れて四星座が既にあの大地へと到着した後か」

「本当に封印を解いて行くのですか、リーブル書記長」

「ええ、準備には早くて三ヶ月……いや、万が一のトラブルが訪れて翌年に繰り越すかも知れないと自分は予測する」

「其の計算方法は如何なる方法なのですか、書記長殿?」

「其れを尋ねるよりも此方から聞きたい事が山程在る」グラサンは其れを怪しく輝かせて目の前の盲目な人に何か確認を取る。「メームル・エアリズにボルーク・ジェミニオン少尉、其れからヘレナ・スコルピアス少佐、そしてヒューマニー・ビーゴ大尉、そして『アマニア・オルトゥス』中佐は何処で油を売っている?」

「ビーゴ大尉は此方迄の道中の警備を担当。スコルピアス少佐は閣下の指令に従って例の修業山に先回りするように移動を開始。メームル・エアリズは『サラマンダー遺跡』にて用事が在るとの事。残り二人については此方でも連絡は届いてない模様で在ります」

「ボルーク・ジェミニオンは実質再起不能。そして蛇使いは行方を晦ますのか……成程」盲目の人に背を向けて転送陣に乗り込んだグラサンのおっさん。「では先に行かせて貰う」

「書記長殿、我も同行を……」「結構だ、閣下は未だ未だ自分を見捨てるような真似はしないだろう」何処にそんな自信が在るのかと問いたい--でもグラサンのおっさんは問う前にテレポートしてゆくわ!

「全く政治を極めると死も在り得る絶叫のトラウマさえも植え付けられないというのか……」「隊長殿、準備は完了しました」盲目の人の背後に部下と思われる人が報告して来た。

「『ゴーレラン』中尉、仕事が早いな」

「ええ、隊長。では『マウゼッザ』中尉と連携して……」「いや、中尉は例の作戦の補佐を担当して貰う」第三部隊も勝手が過ぎるわね--何を考えているのかなあ?

「例の作戦とは何でしょう?」

「ビーゴ大尉からの要請が在った。此の侭海路を奴等の好きにさせる訳には往かない。其の為にも中尉には第十部隊『バルゴラ』にて中隊を率いてビーゴ大尉の部隊と連携を深めて貰いたい」

「……了解しました」ゴーレランって人は背中を向けながらこんな事も尋ねる。「ピスセス少尉は如何されますか?」

「知らぬ菊、引き裂かれし枝、又来る……と」

「は、ハハ……」右腕にも苦笑いされているじゃないか、其の寒い俳句は!

「……」ゴーレランって人が居なく成ってたった一人、懐から写真を取り出す。

「クローム、海の藻屑と成って消える方が身の為だ」

更新日:2019-05-17 05:26:55

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