官能小説

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プレゼント

終演後に花組のみんなでお祝いをして、ちょっぴりアルコールも入って。

「バースデー」という特別感と、明日は休演日という解放感から、疲れよりもテンションが勝ってしまった。
いつもはちゃんと理性が働いているさゆみさんも、タクシーを降りる時にぎゅっと手を繋いできた。

「え?」
「ふふっ。離さないからねー。今日は私が捕まえる日だもん。」

視線で問うと、とろりと甘えた視線で答える。
さゆみさんを追いかけてばかりのコンデュルメを演じているだけに、ちょっぴり不思議な気分になる。

エントランスの大理石にも、硝子のドアにも、エレベータの鏡にも。
しっかりと手を繋いだ私たちが映っていて、心臓がハクハクしてしまう。
お部屋にたどり着くまで心がもちそうにない。

「あの。」
「なあに?」

「・・・いえ。」

私の手を引っ張る様に、ちょっぴり前をゆく背中に声をかける。
自分からアピールするのは構わないくせに、引っ張られると緊張する。
繋がれた手が嬉しくて仕方がないのに、指先が震えている。


「れいちゃん、誕生日おめでとー。」

さゆみさんのお部屋のドアを開けるなり、首に抱き着かれキスをされた。

そのまま舌が差し入れられ、絡みつき、「ふ、ぅん。」と甘い吐息が彼女の鼻から抜ける。
私の頬を両手で包み、より深い角度を探して口角が交じり合う。
抱きしめ返すと、さゆみさんの細い腰が押し付けられ、吐息が更に艶を帯びる。

いつになく積極的なさゆみさんに戸惑ってしまい、顔をのぞきこむ。

「・・・どうしたですか?今日は。」
「だって、誕生日だもん。早く、独り占めしたかった・・・。」

さゆみさんの瞳が紅く潤んでいる。
アルコールのせいだけでない、切ない色を含んで。

「嫉妬」なんて単語はこの人に存在するんだろうか?というぐらいマイペースなだけに、ちらりと見せて下さった本音にぎゅっと胸が鷲掴みにされる。

神様からのプレゼントですかね。これは。

「さゆみさん・・・っ!」

言葉を交わすのももどかしく、二人でもつれ合うようにしてベッドに倒れこむ。
皺になるのも構わずに、お互いに洋服を脱がしあい、床に脱ぎ捨てる。
身体の奥から熱が湧き出てくるようで、冷気が肌を撫でるのさえ心地よい。

「れいちゃん・・・。」

さゆみさんが腕を伸ばし、私を抱きしめる。
素肌が触れ合い、シーツがさらさらと音を立てる。
お互いの心臓がぴったりとくっつきあい、鼓動が重なる。

「ふふっ。れいちゃんの心臓すごいドキドキしてる。」
「さゆみさんと抱き合ってるからです。」

そういうさゆみさんだって、私と同じぐらいドキドキしてます!

「れいちゃんの肌、すっごく熱い。だいぶ飲んだ?」
「いえ。たしなむ程度でしたよ?あまり強くないですしね。」
「あははー。私と一緒だーっ・・・。」

抱き合うことで満足したのか、幸せそうにふわふわと笑っている。

「じゃあ、あれだ。欲情してるんだ。」
「・・・っ!」

何を言い出すかと思えば。
人差し指で私の胸をぎゅっと押さえ、悪戯っぽい瞳を向ける。
酔っ払うと、こんなキャラになるんですね!さゆみさん!

「・・・してる、って言っていいんですか?」
「してないの?」
「・・・してますけど。」


更新日:2019-03-10 22:17:44

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