- 16 / 33 ページ
第13章ーⅣ:悪どき思惑
翌日の朝、
「おはようございます」
朝早くからサーシャは目を覚ましてダイニングに来て、遅れて(とは言っても何時もの時間ではあるが)やって来たエレーヌ達を驚かせた。
「おはようございますサーシャ様、…今朝は一段とお早いお目覚めで御座いますね」
「さ、サーシャ様っ!早いお目覚めですね〜」
エレーヌはともかく、冷静なあのポーでさえ今朝のサーシャの様子に驚きを隠せない。
「だって、今日はエリカさんに逢える日ですもの。嬉しくて早くから目が覚めてしまったの!」
そう呟くサーシャの表情は本当に嬉しそうで、見ていたエレーヌやポーの表情がつい綻んでしまう。
「本当に楽しみなので御座いますね。折角ですから何かお土産でもお持ちになられますか?」
「あっ!それ良い考え〜!やっぱりお茶会なら差し入れは美味しい焼き菓子とかがぴったりです〜!ハックさーん、サーシャ様の為に何か作って下さいよ〜!」
そう叫ぶなり、エレーヌはハックの居る台所へと走っていった。
「ハックさーん!サーシャ様のお茶会用のお菓子何か作って下さいな〜!」
「エレーヌ、朝食が未だのくせにお菓子を作れるかっ!ほら、早くこれを持って行きなっ!」
台所に居たハックはそう怒鳴りながら朝食の魚料理をエレーヌに手渡すのであった。
「うわぁ、そんな怒らなくて良いじゃない〜」
「今は忙しいんだ。ひと段落したら何か焼き菓子でも作ってやるよ」
「さっすがハックさーん!勿論私達の分も作って下さいね〜♪」
「分かった分かった」
流石のハックもエレーヌの押しに負けて半ば諦め気味に呟いた。
そんな二人の様子にサーシャはつい笑みがこぼれてしまう。
「ありがとうございますハックさん」
「いやいや、別にエレーヌが言ったからではないですよ。何かご希望の品がお有りですかな?」
「でしたら私の好きなベリー沢山のパイをお願いします」
「ベリーのパイですね、かしこまりました。朝食が出来次第直ぐに取り掛かりますので朝食を取りながら待っていてください」
「ありがとうこざいます」
嬉しそうに微笑みながらサーシャは食卓の席へと向かうのであった。
*
「は?何だって!?」
遅番の為にいつもより遅く起きてきた…というより、普段はサーシャが起こしに来るのだが、それが無かった為にすっかり寝過ごしてしまったジーフェスはポーの一言に大声を出した。
「ですからその…サーシャ様は既にリンブドル家に向かわれたのです」
「向かわれたって…未だこんな朝の時間だぞ!」
「まあ朝といっても、とっくに陽は高い時間ですけどねぇ〜」
「お前は黙っていろエレーヌ」
横からしゃしゃり出てきて珍しく正論を言うエレーヌをジーフェスは不機嫌の面持ちで睨みつける。
「うわ、旦那様怖ーい。だって、朝早くから迎えの馬車が来たからサーシャ様、嬉々として出掛けていきましたよ」
「なら何故その時に俺を起こさないっ!」
「迎えの方がお急ぎの様子でしたし…何よりサーシャ様御自身が喜んで行かれたので私達もお止めしようがなかったので御座います」
「む…」
ポーの怯えた暗めの口調から、流石のジーフェスもこれ以上は怒鳴りつけるのを堪え、代わりに独り愚痴をこぼすのであった。
「いくら前もって約束していたとはいえ、屋敷の主人(あるじ)たる俺に挨拶も無しに無断で妻君を連れ出すなど…非常識過ぎないか?」
「それ同感!迎えに来たあっちの従者、凄く感じ悪かったですよ。当然サーシャ様には諂えた態度だったけど、あたしやポーさんには何か人を見下したような、凄く不躾な態度でしたよ〜。あー!思い出しただけでも嫌な感じー!」
当時の事を思い出してか、エレーヌがぷりぷりと怒り心頭地団駄を踏みだした。
「こういうのは何ですが、私もエレーヌと同意見です。あの従者は何か嫌な感じがいたしました」
「え!?」
普段から感情の起伏が激しいエレーヌが怒るのはまだ判るが、普段あまり人の悪口を言わないポーの言葉にジーフェスは驚きを隠せない。
「坊っちゃまの仰る通り、屋敷の主人たる坊っちゃまに挨拶も無しに奥方様を連れ出すような従者など、礼儀も何もありません。本当に向こうの屋敷に行かせて良かったのか、嫌な予感がしてならないのです」
「おはようございます」
朝早くからサーシャは目を覚ましてダイニングに来て、遅れて(とは言っても何時もの時間ではあるが)やって来たエレーヌ達を驚かせた。
「おはようございますサーシャ様、…今朝は一段とお早いお目覚めで御座いますね」
「さ、サーシャ様っ!早いお目覚めですね〜」
エレーヌはともかく、冷静なあのポーでさえ今朝のサーシャの様子に驚きを隠せない。
「だって、今日はエリカさんに逢える日ですもの。嬉しくて早くから目が覚めてしまったの!」
そう呟くサーシャの表情は本当に嬉しそうで、見ていたエレーヌやポーの表情がつい綻んでしまう。
「本当に楽しみなので御座いますね。折角ですから何かお土産でもお持ちになられますか?」
「あっ!それ良い考え〜!やっぱりお茶会なら差し入れは美味しい焼き菓子とかがぴったりです〜!ハックさーん、サーシャ様の為に何か作って下さいよ〜!」
そう叫ぶなり、エレーヌはハックの居る台所へと走っていった。
「ハックさーん!サーシャ様のお茶会用のお菓子何か作って下さいな〜!」
「エレーヌ、朝食が未だのくせにお菓子を作れるかっ!ほら、早くこれを持って行きなっ!」
台所に居たハックはそう怒鳴りながら朝食の魚料理をエレーヌに手渡すのであった。
「うわぁ、そんな怒らなくて良いじゃない〜」
「今は忙しいんだ。ひと段落したら何か焼き菓子でも作ってやるよ」
「さっすがハックさーん!勿論私達の分も作って下さいね〜♪」
「分かった分かった」
流石のハックもエレーヌの押しに負けて半ば諦め気味に呟いた。
そんな二人の様子にサーシャはつい笑みがこぼれてしまう。
「ありがとうございますハックさん」
「いやいや、別にエレーヌが言ったからではないですよ。何かご希望の品がお有りですかな?」
「でしたら私の好きなベリー沢山のパイをお願いします」
「ベリーのパイですね、かしこまりました。朝食が出来次第直ぐに取り掛かりますので朝食を取りながら待っていてください」
「ありがとうこざいます」
嬉しそうに微笑みながらサーシャは食卓の席へと向かうのであった。
*
「は?何だって!?」
遅番の為にいつもより遅く起きてきた…というより、普段はサーシャが起こしに来るのだが、それが無かった為にすっかり寝過ごしてしまったジーフェスはポーの一言に大声を出した。
「ですからその…サーシャ様は既にリンブドル家に向かわれたのです」
「向かわれたって…未だこんな朝の時間だぞ!」
「まあ朝といっても、とっくに陽は高い時間ですけどねぇ〜」
「お前は黙っていろエレーヌ」
横からしゃしゃり出てきて珍しく正論を言うエレーヌをジーフェスは不機嫌の面持ちで睨みつける。
「うわ、旦那様怖ーい。だって、朝早くから迎えの馬車が来たからサーシャ様、嬉々として出掛けていきましたよ」
「なら何故その時に俺を起こさないっ!」
「迎えの方がお急ぎの様子でしたし…何よりサーシャ様御自身が喜んで行かれたので私達もお止めしようがなかったので御座います」
「む…」
ポーの怯えた暗めの口調から、流石のジーフェスもこれ以上は怒鳴りつけるのを堪え、代わりに独り愚痴をこぼすのであった。
「いくら前もって約束していたとはいえ、屋敷の主人(あるじ)たる俺に挨拶も無しに無断で妻君を連れ出すなど…非常識過ぎないか?」
「それ同感!迎えに来たあっちの従者、凄く感じ悪かったですよ。当然サーシャ様には諂えた態度だったけど、あたしやポーさんには何か人を見下したような、凄く不躾な態度でしたよ〜。あー!思い出しただけでも嫌な感じー!」
当時の事を思い出してか、エレーヌがぷりぷりと怒り心頭地団駄を踏みだした。
「こういうのは何ですが、私もエレーヌと同意見です。あの従者は何か嫌な感じがいたしました」
「え!?」
普段から感情の起伏が激しいエレーヌが怒るのはまだ判るが、普段あまり人の悪口を言わないポーの言葉にジーフェスは驚きを隠せない。
「坊っちゃまの仰る通り、屋敷の主人たる坊っちゃまに挨拶も無しに奥方様を連れ出すような従者など、礼儀も何もありません。本当に向こうの屋敷に行かせて良かったのか、嫌な予感がしてならないのです」
更新日:2019-09-23 10:45:18