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第13章ーⅢ:商人との歪な関係
「エリカさんの屋敷の場所を知りたい?」
ジーフェスが夕刻前に帰宅するや否や、待ち構えていたサーシャは開口一番にそう尋ねたのであった。
「はい、昨夜は凄く楽しくて、是非またお逢いしたいのだけど、連絡先を聞きそびれてしまって…もしかしたらジーフェス様ならエリカさんのお住まいをご存知ではないかと思って…」
「エリカさんか…確かリンブドル商会とか言ってたよな。俺は覚えてないが、庁舎にある書類には記載されている筈。明日調べてみるよ」
ジーフェスのその言葉にサーシャはぱあっと表情を明るくした。
「ありがとうございます!」
喜びはしゃぐサーシャの様子に、ついジーフェスまで笑顔が出てきてしまう。
“サーシャがここまで喜ぶなんて、本当にエリカさんに逢いたいのだな”
「よかったですね〜サーシャ様、サーシャ様ったら朝からずっとエリカさんの話ばかりしているのですよ。もう耳にタコが出来るくらい」
「もう!エレーヌさんったら!」
エレーヌの突っ込みにサーシャは恥ずかしそうに頬を赤らめてしまう。
“そうか、そんなに彼女と逢いたいのか…ライザにはそんな素振りは見せないから、そのエリカさんとは本当の意味で友達になりたいのだな”
ジーフェスはそう察し、今まで自分から積極的に人と関わらないでいたサーシャの変化に驚きつつも嬉しく感じるのであった。
「さあさあ、夕食にしましょう。折角ハックさんが美味しいお肉を焼いてくれたんですよ、冷めたら勿体ないですよ〜」
「そうだな。頂こうかな」
この話題はこれきりとなって、ジーフェスとサーシャは夕食を始めるのだった。
*
ーー翌日。
「じゃあ行ってくるよ」
屋敷の玄関先では、遅番の為昼近くになってからの出勤になったジーフェスをサーシャが見送っていた。
「行ってらっしゃい」
サーシャは笑顔でジーフェスを見送っている。いつもとは違うその嬉しそうな表情にジーフェスは複雑な気持ちである。
“いくらエリカさんに逢いたいとはいえ、そんな表情を向けられたらなあ…まあ多分書類には記載されているとは思うが、こりゃ解らなかった時は大変だぞ”
苦笑いしながらも彼は庁舎へと向かうのであった。
“嬉しい、今夜にはエリカさんのお住まいが解るのね。ああ!早く夜にならないかしら”
ジーフェスの姿が見えなくなるまで見送っていたサーシャはそんな事を思いながら屋敷の中へと戻ろうとしたその時、ひとりの人物が屋敷に向かってくるのが目に入ってきた。
「…?」
サーシャが不思議に思う間も無く、その人物は彼女の直ぐ目の前まで近寄ってきた。
その人物は少し痩せ気味の些か背が低い中年の男性で、サーシャに対して怒ったような不機嫌そうな表情を向けるのであった。
「失礼、こちらサーシャ様の御屋敷で間違いありませぬか?」
「は、はい」
「お初にお目に掛かります。わたくしはリンブドル家にお仕えしております者、この度は主人(あるじ)の依頼でサーシャ様にこちらをお届けに参りました」
「リンブドル家、エリカさんの御屋敷の方ですか?」
だが無愛想な男はサーシャの問いかけには答えず、無言で懐から何やら取り出してサーシャに差し出すのだった。
「…手紙?」
それは上質な紙で出来た、裏面には家紋入りの蝋封がされていて、表面にはサーシャの宛名が書かれた一通の手紙であった。
「はい、我が主人(あるじ)からの手紙で御座います」
「主人から?エリカさんでは無くて」
「はい、ではわたくしはこれで失礼致します」
男は役目を終えると深々と一礼するなり早々にその場から立ち去っていった。
「……」
「サーシャさま、如何されましたか?」
ジーフェスが夕刻前に帰宅するや否や、待ち構えていたサーシャは開口一番にそう尋ねたのであった。
「はい、昨夜は凄く楽しくて、是非またお逢いしたいのだけど、連絡先を聞きそびれてしまって…もしかしたらジーフェス様ならエリカさんのお住まいをご存知ではないかと思って…」
「エリカさんか…確かリンブドル商会とか言ってたよな。俺は覚えてないが、庁舎にある書類には記載されている筈。明日調べてみるよ」
ジーフェスのその言葉にサーシャはぱあっと表情を明るくした。
「ありがとうございます!」
喜びはしゃぐサーシャの様子に、ついジーフェスまで笑顔が出てきてしまう。
“サーシャがここまで喜ぶなんて、本当にエリカさんに逢いたいのだな”
「よかったですね〜サーシャ様、サーシャ様ったら朝からずっとエリカさんの話ばかりしているのですよ。もう耳にタコが出来るくらい」
「もう!エレーヌさんったら!」
エレーヌの突っ込みにサーシャは恥ずかしそうに頬を赤らめてしまう。
“そうか、そんなに彼女と逢いたいのか…ライザにはそんな素振りは見せないから、そのエリカさんとは本当の意味で友達になりたいのだな”
ジーフェスはそう察し、今まで自分から積極的に人と関わらないでいたサーシャの変化に驚きつつも嬉しく感じるのであった。
「さあさあ、夕食にしましょう。折角ハックさんが美味しいお肉を焼いてくれたんですよ、冷めたら勿体ないですよ〜」
「そうだな。頂こうかな」
この話題はこれきりとなって、ジーフェスとサーシャは夕食を始めるのだった。
*
ーー翌日。
「じゃあ行ってくるよ」
屋敷の玄関先では、遅番の為昼近くになってからの出勤になったジーフェスをサーシャが見送っていた。
「行ってらっしゃい」
サーシャは笑顔でジーフェスを見送っている。いつもとは違うその嬉しそうな表情にジーフェスは複雑な気持ちである。
“いくらエリカさんに逢いたいとはいえ、そんな表情を向けられたらなあ…まあ多分書類には記載されているとは思うが、こりゃ解らなかった時は大変だぞ”
苦笑いしながらも彼は庁舎へと向かうのであった。
“嬉しい、今夜にはエリカさんのお住まいが解るのね。ああ!早く夜にならないかしら”
ジーフェスの姿が見えなくなるまで見送っていたサーシャはそんな事を思いながら屋敷の中へと戻ろうとしたその時、ひとりの人物が屋敷に向かってくるのが目に入ってきた。
「…?」
サーシャが不思議に思う間も無く、その人物は彼女の直ぐ目の前まで近寄ってきた。
その人物は少し痩せ気味の些か背が低い中年の男性で、サーシャに対して怒ったような不機嫌そうな表情を向けるのであった。
「失礼、こちらサーシャ様の御屋敷で間違いありませぬか?」
「は、はい」
「お初にお目に掛かります。わたくしはリンブドル家にお仕えしております者、この度は主人(あるじ)の依頼でサーシャ様にこちらをお届けに参りました」
「リンブドル家、エリカさんの御屋敷の方ですか?」
だが無愛想な男はサーシャの問いかけには答えず、無言で懐から何やら取り出してサーシャに差し出すのだった。
「…手紙?」
それは上質な紙で出来た、裏面には家紋入りの蝋封がされていて、表面にはサーシャの宛名が書かれた一通の手紙であった。
「はい、我が主人(あるじ)からの手紙で御座います」
「主人から?エリカさんでは無くて」
「はい、ではわたくしはこれで失礼致します」
男は役目を終えると深々と一礼するなり早々にその場から立ち去っていった。
「……」
「サーシャさま、如何されましたか?」
更新日:2019-04-01 17:09:06