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先輩は後輩?この子をどうすれば



 カントー地方の西北に位置する街、ニビシティ。

 ポケモン修行場所としてニビシティポケモンセンターが推薦する「トレーニングスポット」1位を飾るオツキミ山へ向かうための最中の街でもあるこの街は、新米から玄人ポケモントレーナーまで多数行き交う。

 その中を全力疾走する少年が1人。行き交う人々を追い越しすれ違い、その少年はニビシティを駆け抜けていく。

 少年は駆け抜けていく先でポケモンセンターを見つけると、そこへ真っ先に飛び込み、受付のお姉さんに問い質す。

「詞先輩…、響句詞先輩はどの部屋ですか!!」

「あ、あなた、響句さんのお知り合いですか? 響句さんなら、救護室にいらっしゃいますよ」

 突然の問い質しに驚いた受付のお姉さんは、落ち着いた対応で少年の問に返答する。少年は感謝の言葉を残すと、ポケモンセンター内ということもあり、走りたい気持ちを早歩きに変えて、その救護室を目指した。

 この少年、神宮 旭(ジングウ アキラ)。12歳。10歳の頃に受験した「ポケモントレーナー認定試験」に一発合格、ポケモントレーナーとしての旅立ちを果たし、順調にジムバッジを7つ集め、残すところバッジ1で、念願のポケモンリーグ出場権を得ることができる。

 そんな旭少年が目指す先、救護室の前の扉へと辿り着いた。

 旭は扉を開け、その部屋へと駆け込んだ。

「詞先輩! 大丈夫ですか!」

「うわぁっ! び、びっくりした!」

 そこには寝間着のような楽な恰好でベッドに横たわる少女 響句 詞(ヒビク コトバ)がいた。




「まったくビックリしましたよ。電話がかかってきたんですよ? ニビのポケモンセンターから。それにその内容が、雨の中でお巡りさんのお姉さんに連れられてポケモンセンターに来て? で、すごい熱だから来てくださいって」

 旭の語る通り、あの後詞はたまたま通りかかった警察官のお姉さんに発見され、最寄りのポケモントレーナーであるここニビシティポケモンセンターまで連れられてきた。

 その後、冷たい雨に打たれ続けていた詞は大熱を出し、こうして救護室で看護されている。

「私の頼る先は、先輩のあきくんだけだから」

「そりゃぁ…ボクの方が詞先輩より先輩だけど、それはポケモントレーナーとしての話であって、ボクは先輩の後輩ですよ」

 旭は詞の年下の幼馴染であり、同じポケモントレーナー認定学校へ通った同士だ。詞が認定試験に落ち続けていた頃に詞と同じ会場で『ポケモントレーナー認定試験』を受験することがあったが、旭は一発合格を果たし、晴れてポケモントレーナーデビューを飾ることとなった。対して詞は不合格であったため、学年で言えば後輩だが、ポケモントレーナーとしては先輩という関係になってしまった経緯がある。

更新日:2019-01-24 15:44:29

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