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死を迎えるまでの呪いの傷口との戦い・・


「・・皮肉なものだな‥戦士の俺はこのままベットの上で死ぬだろう・・
エイル・・エルトニア」

左手を自分の顔にあてるアーシュ 
泣いてはいないが・・肩が小刻みに震えている

「・・・・」リアンは黙ってアーシュの様子を静かに見守っている


「セルトは・・?」アーシュ


「セルト将軍は死にました あの激しい戦いで 
沢山の魔法の攻撃と無数の槍で身体を貫かれ・・

壮絶な死にざまでした・・
貫いた無数の槍が支えになり ほとんど立った状態で 絶命しました・・

あの伝説の貴方の先祖である 前の火焔の王アジェンダ王の様に・・」

「戦に参加した竜人はすべて あの戦で戦死しました・・」

「ただ一人 戦に参加しなった 黒の王都の魔法画、画家の竜人の老人 彼だけが生き残りましたが
昨年 急な病で 身罷りました・・」

「長き年月に渡り、黒の王族を守護してきた・・
竜人の一族は絶えました・・滅びました・・。」

「あのケンタウロス一族が絶えて 滅んだように・・・」リアン

「・・ナーリンが産んだセルトの子供は? あの子は?ナーリンは?」
再びアーシュが訊ねる

「セルト将軍の妻のナーリン殿ともども 死にました・・

黒の王宮に攻め込んだ 敵の兵士達に斬り殺されました・・

その時に二人の竜人の妻達と幼い子供達がいましたが
同じく斬り殺されました

その時に タルベリイ殿も・・」

・・セルト・・ナーリン・・タルベリイ・・
あのナーリンとセルトの子供・・

ナーリンの腕に抱かれていた 小さな竜人の赤ん坊・・


彼らの姿を想い浮かべて 唇を噛み締め 目を閉じる アーシュ


しばらく後の沈黙の後で またアーシュがリアンに訊ねる


「・・巨人族は その後どうした?」アーシュ

「巨人族の事ですか・・
あのエリンシア姫の夫 アーサーが王になりました

今は平和条約を結び やっと本当の平和を手にいれました・・」

「・・幾世代にも・・
二千年の長い時間 歴史の裏から歴代の黒の王や白の宗主 

今回は巨人族の王を操ってきた あの魔法使い・・
追放された神・・奴は 滅んだ・・」

「奴がいない この世界に やっと本当の意味の平和が訪れる・・」
アーシュは呟く・・

「・・・・先読みの話では 
焔・・炎の魔法の世代は 二度と出ないそうです・・

貴方とあの小さなアーシュで終わりです・・火竜王(サラマンデイア)」


「・・それに 全ての属性を持った黄金の竜の王も・・現れない・・」
リアン

「・・・焔の世代よりは 戦は少ないが 
必ず黄金の瞳の・・竜の王の時代も戦いは多い・・」

「・・戦乱の時代が終わったという事か・・」アーシュ


「・・黒の王族の血が流れている家系の黒の貴族の子供で

天才的な先読みの子供のフィンという子が現れて・・
全てを予言しました・・


貴方が囚われているあの魔法の水晶の場所を 
その力で・・読み取りました・・

片目だけ 黄金の瞳です・・」リアン


「その瞳・・黄金の竜の王の力か・・
それは いつか直接 礼を言わないとな・・」アーシュ

「・・そうですねアーシュ殿」リアン


「その子は以前 何度か この城に遊びに来て 
小さなアーシュとチエスをしてましたね
アーシュより 年上ですが 仲がいいですよ・・ふふ」リアン

「・・平和と繁栄が続き 

幾世代か風と水と土の魔法の世代が出た後には・・
王は子を残せずに この王国も滅び・・

直系の人々は 特殊な疫病で 死に絶えるそうです・・
血を受けついだ傍系が少し残るだけだそうです・・」リアン

「・・・そうか・・王国は そうやって終末を迎えるのか・・」
静かな声でアーシュは言う

こんこんドアを叩く音 

「どうぞ」リアン ガチャリと扉が開く 

「お茶をどうぞ お父様 リアン父様」

小さなアーシュがお茶とお菓子を乗せたお盆をかかえて やって来た

「・・有難う・・小さなアーシュ・・」アーシュは目を細めて笑う

二人の様子にリアンも微笑む・・

更新日:2018-12-23 22:43:39

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黄金の時間・予知の終末の悪夢・覚醒する黄金の竜の王