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五日間のアルバイト
ここは星の名を持つ破片世界のブリタニア。
今年の夏は大変な猛暑のため、ここブリタニアの民も涼を求めて各地へ避暑に出かける者も多くなっておりました。
ブリタニアの統治者ブラックソン王も民衆のために、かねてから城の魔法使いや細工師にある「もの」を作るよう命じてました。
新米広報官がようやく完成した品物を、陛下にお持ちしました。
「陛下、『魔法のピクニックバスケット』が完成いたしました。どうぞ。」
「うむ」
各地から送られてきた調査書や報告書の閲覧を止め、蔓で編まれたかわいらしい籠を開きます。
籠の中に敷かれた格子模様のブランケットの上に、出来立てほかほかのハンバーガーにホットドッグ、じゅうじゅう音を立てている焼きたてソーセージが現れました!
それはフードクリエイトの魔法がかかったピクニックバスケットでした。
効果は一度きり、出てくるものも限定された特別製の魔法がかかっておりました。
ブラックソン陛下は、とても美味しそうな匂いに頬を緩めました。
「おお、これは良い出来た。味はどうかな?」
「それはもう保障いたします。城の料理長が腕によりをかけた自信作を完璧に複製したものが現れると、開発担当の魔法使いが申しておりました。どうぞご賞味ください。」
ブラックソン王は、ジューシーな肉のパテにシャキシャキのレタスがはさまったハンバーガーを手に取りかぶりつきます。
まぎれもなくブラックソン城の極上の料理の味そのものでした。
「うむ、美味い。これならブリタニアの民も喜ぶことだろう。」
陛下は大変満足して一個を完食し、何度もうなづきました。
ところが広報官は、大変いいにくそうにしながら陛下に申し上げます。
「陛下、完成度に満足していただけたこと光栄に思います。ですが、残念ながらこのバスケットの材料が城では全部を準備できず、多くの民に配布することができないようです。」
「ふむ、それは困ったことだな。」
ブラックソン王は目を閉じ、しばらくお考えになっておりました。
やがて良いことを思いついたように目を開き、微笑んで広報官に言いました。
「ではこの魔法の品を作る設計書を配布してはどうかな?このフードクリエイトの魔法は一度きりだ。民自身で作れるようにすれば、材料は各自で準備できるしいつでも作れる。どうであろう?」
「それは大変良いお考えだと思います。早速この設計書を自動書記して渡す機械を設置いたしましょう。」
「うむ、頼んだぞ。」
広報官はブラックソン王に深々とお辞儀をして退出していきました。
陛下はバスケットに残ったソーセージをつまみながら、また王の仕事へ戻ったのでした。
* * *
その日、広報官は大変困っておりました。
城付きの細工師に自動書記のからくり製の熊人形を作らせたのは良かったのですが、うまく動いてくれません。
陛下に言い渡された期限はどんどん近づきます。
かといって配布に割ける人員はお城にはいません。
「し、しかたない。かくなる上は―――」
頭を抱えていた広報官は羽ペンを取ります。そして羊皮紙にこう書きつけました。
----------------------------
求む!フードクリエイトの魔法程度を書写できる茶色の熊!
五日間限定!報酬は応相談!
-----------------------------
このような手紙をしたため、各都市の首長当てに早馬の使者を送ったのでした。
わざわざ「茶色の熊」と指定しているのを見ると、とても慌てていたに違いありません。
果たしてそんな条件の合う熊さんが見つかるのでしょうか。
今年の夏は大変な猛暑のため、ここブリタニアの民も涼を求めて各地へ避暑に出かける者も多くなっておりました。
ブリタニアの統治者ブラックソン王も民衆のために、かねてから城の魔法使いや細工師にある「もの」を作るよう命じてました。
新米広報官がようやく完成した品物を、陛下にお持ちしました。
「陛下、『魔法のピクニックバスケット』が完成いたしました。どうぞ。」
「うむ」
各地から送られてきた調査書や報告書の閲覧を止め、蔓で編まれたかわいらしい籠を開きます。
籠の中に敷かれた格子模様のブランケットの上に、出来立てほかほかのハンバーガーにホットドッグ、じゅうじゅう音を立てている焼きたてソーセージが現れました!
それはフードクリエイトの魔法がかかったピクニックバスケットでした。
効果は一度きり、出てくるものも限定された特別製の魔法がかかっておりました。
ブラックソン陛下は、とても美味しそうな匂いに頬を緩めました。
「おお、これは良い出来た。味はどうかな?」
「それはもう保障いたします。城の料理長が腕によりをかけた自信作を完璧に複製したものが現れると、開発担当の魔法使いが申しておりました。どうぞご賞味ください。」
ブラックソン王は、ジューシーな肉のパテにシャキシャキのレタスがはさまったハンバーガーを手に取りかぶりつきます。
まぎれもなくブラックソン城の極上の料理の味そのものでした。
「うむ、美味い。これならブリタニアの民も喜ぶことだろう。」
陛下は大変満足して一個を完食し、何度もうなづきました。
ところが広報官は、大変いいにくそうにしながら陛下に申し上げます。
「陛下、完成度に満足していただけたこと光栄に思います。ですが、残念ながらこのバスケットの材料が城では全部を準備できず、多くの民に配布することができないようです。」
「ふむ、それは困ったことだな。」
ブラックソン王は目を閉じ、しばらくお考えになっておりました。
やがて良いことを思いついたように目を開き、微笑んで広報官に言いました。
「ではこの魔法の品を作る設計書を配布してはどうかな?このフードクリエイトの魔法は一度きりだ。民自身で作れるようにすれば、材料は各自で準備できるしいつでも作れる。どうであろう?」
「それは大変良いお考えだと思います。早速この設計書を自動書記して渡す機械を設置いたしましょう。」
「うむ、頼んだぞ。」
広報官はブラックソン王に深々とお辞儀をして退出していきました。
陛下はバスケットに残ったソーセージをつまみながら、また王の仕事へ戻ったのでした。
* * *
その日、広報官は大変困っておりました。
城付きの細工師に自動書記のからくり製の熊人形を作らせたのは良かったのですが、うまく動いてくれません。
陛下に言い渡された期限はどんどん近づきます。
かといって配布に割ける人員はお城にはいません。
「し、しかたない。かくなる上は―――」
頭を抱えていた広報官は羽ペンを取ります。そして羊皮紙にこう書きつけました。
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求む!フードクリエイトの魔法程度を書写できる茶色の熊!
五日間限定!報酬は応相談!
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このような手紙をしたため、各都市の首長当てに早馬の使者を送ったのでした。
わざわざ「茶色の熊」と指定しているのを見ると、とても慌てていたに違いありません。
果たしてそんな条件の合う熊さんが見つかるのでしょうか。
更新日:2018-11-01 14:58:14