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いつものカントリーハウス



三原市。この街は人口が3万人にも満たない主な産業は農家の小さな街です。

そんな街にある三原湖畔公園の中にはグルメ雑誌にも掲載されるほど人気があるピザ屋があります。

そのピザ屋の名前は、自家製ピザ屋カントリーハウス。

ピザ屋としては珍しいカフェスタイルの店構えで、自然を楽しみながら食事ができるテラス席もあり、連日多くお客さんで賑わう三原市1番のレストランです。

さて、そんな素晴らしいレストランを経営しているスタッフさんの様子を見て見ましょう。

おや?もう9時を回っているのにスタッフの姿が見えませんし店内も真っ暗です。

ちなみにこのお店の開店時間は11時です。準備の事を考えるともうそろそろ店内で作業をしていないと開店時間に間に合わなくなる気がしますが大丈夫なのでしょうか?何となく嫌な予感がしますが、店舗裏にある従業員用の部屋を覗いてみましょう。




布団の中で健康的に熟睡する男女2人を無表情で見下ろす1人の男性、鳥居一斗はこの状態を理解出来ずに悩んでいる。

どうしてこの二人は未だにスヤスヤと健康的に寝ているのか。

その幸せそうな寝顔を見ていると、白い腰エプロンも真っ赤になるほど怒りが込み上げてくる。

だからこそ、この怒りを込めて二人を叩き起すことにする。

うぅっと息を吸い込んで。

「とっとと起きやがれこの穀潰し共があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

どんなニワトリや目覚まし時計よりもけたたましいく、地の底まで届くような怒号が響く。

そんな彼の怒りを知ってか知らずか、二人はやっと目を覚ます。

「んだよ。うっせぇーな」

「…………うるさいわね。朝から何なのよ」

強烈なモーニングコールに二人は文句を言いながら気だるそうに布団の中から起き上がり
その声の方に顔を向ける。
その先にいたのは、夜叉のような表情をしたオーナーだった。

「テメェら……俺が昨日のミーティングでなんて言ったか覚えてっか?」

額に血管が浮き出るレベルで怒りを覚えながらも、平然を装い未だに眠そうにしている二人へ馬鹿以外は知っていて当然の質問をする。

「あぁ…………あれだろ?クレーマー用のゴメンねピザに今度からゴキブリの足をトッピングするって話しだろ?」

「それは先週のミーティングの話しだろ」


「ばっかね。確か昨日のミーティングは、今日から恋する乙女はレモンの味ピザを発売するって話しでしょ?」

「そんな吐瀉物みたいなピザは出さんし、そんな話をした覚えもない」

「お前こそ何の話を聞いてたんだよ。俺は思い出したぜ、確か唐辛子ハバネロキャロライナリーパーデスソースをトッピングした地獄の業火ピザの発売日だろ?」

「…………それは先々週の話しだろ、しかもそのピザで病院送りになった客がいたから発売中止にしただろが」

「あぁ。そう言えばそうだったな、テラス席であのピザを食ってた客が突然奇声を上げながら湖畔に飛び込んだ時は流石にビビったぜ」

「アンタらの記憶力の無さにはある意味びっくりよね?ちなみに私は完璧に思い出したわ。あれでしょ、恋す…………」

「(話の途中で)はいもういいです。お腹いっぱいです」

近づく所か段々遠ざかっていく答えに彼は怒りさえ失せてしまいます。

「はぁ…………もういい。これを見ろよ」

そう言うと彼は1枚の紙を二人に見せる。
その紙には、特別企画 基本料金に100円プラスするごとにトッピングを倍にしちゃうキャンペーンと書かれている。

その紙を見た途端に二人は今まで忘却の彼方に忘れ去られていた記憶が蘇る。

「そう言えばそんなこと言ってたわね。全く興味がないから忘れてたわ」

「なんか今考えてみっとさ、大人気ハンバーガーショップのパクリみてぇなキャンペーンだよな」

散々ない言われようでもうなんの感情も湧かなくなってきた。

「それで?そのキャンペーンがどうしたんだよ」

「ほう…………なら外を見てみろよ」

未だにこの状況を分かっていないアホ二人に現実を見せるため、今まで締め切られていたカーテンを少しだけ開ける。
そこに見えてきたのは眩い日差しと彼ら3人にとっては直視し難い現実だった。

更新日:2018-10-10 22:00:37

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