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男たち
「おいおい、ヨッさん大丈夫かよ」
その夜、佐野はひどく酔ってしまった。
関に肩を抱えられながら、どうにか立ち上がり、店を出る。
「ぅう…雄三さん、すまん…」
「いいって。しかし珍しいな、ヨッさんがこんなに酔っ払うの」
佐野のふっくらした身体の感触に、動揺を顔に出さぬよう平静を装いながら応える関。
「どうする。俺んち来るか?」
酒を飲んで終電を逃したときなど、互いのアパートに泊まることは、今までも何度かあった。
互いに独り暮らしだ。気兼ねすることはなかった。
「ぅう…すまん…」
「俺ぁ別にいいけどよ…」
佐野の重い身体を支えながら、関は片手を上げてタクシーを止めた…
……………
関の部屋に転がり込むように上がり、ふたりは倒れ込むように、敷きっぱなしの布団や畳の上にそれぞれひっくり返った。
「うわ…アッチぃなあ!汗だくだよ…!ヨッさん、重すぎだって…!」
締め切っていた狭い部屋は、真夏の熱気が籠もっていた。
笑いながらどうにか上体を起こし、座卓の上のエアコンのリモコンを掴んでスイッチを入れ、着ていたシャツを脱ぐ関。
関はズボンも脱いでトランクス一丁になる。
夏の間の関の、いつもの部屋での過ごし方だ。
少し冷え過ぎるくらいエアコンが効いた部屋で半裸で過ごすくらいが、暑がりの関には丁度良いのだった。
唸り声を上げてエアコンが冷風を吐き出してくる。
布団の上であぐらをかいた関は、すぐ近くの畳の上でひっくり返っている佐野に声をかける。
「おぉい、ヨッさん。気分はどうだ?シャツ脱いだ方が楽だぞ」
「ぅうん…後で…」
低く呻いて寝返りを打ち、関に背を向ける佐野。
「おい、聞けって。ヨッさんも汗でシャツがビチャビチャだろうが。そのまま寝たら風邪ひくぞ。脱げよ」
さっきまで感じていた、佐野の体の感触が早くも懐かしい。
その佐野が酔っ払って駄々っ子のようになっている。
何だか愉快になって、関は笑いながら佐野を再びひっくり返して仰向けにすると、佐野のシャツのボタンに手をかける。
目を閉じた佐野が、仰向けに寝たままされるがままになっている。
佐野のことを密かに想う関に、下心が無いはずはない…
指に感じる柔らかな胸と腹…胸がドキドキしている。
そんな関の心も知らず、佐野はされるがまま、関に身を任せている。
「うぅ…ありがとう…今日は本当にすまん…雄三さん…」
片腕で顔を覆い、小さな声で詫びる佐野。
「構わねえって。ズボンも脱がすぞ。皺になっちまう」
佐野のスラックスを脱がそうと、ベルトに手をかける関。
ふっくらした股間の膨らみに、どうしても目が行く。
関の酔いは興奮のため、覚めかけている…
ベルトを緩めてスラックスのボタンを外し、ファスナーを下ろす…
指に触れる佐野の股間の膨らみ…
くそ…本当に…可愛い奴だよ…
関のトランクスの股間はテントを張っている…
酔い潰れた佐野には気付かれまい…
ズル…ッとスラックスを脱がす。靴下も引っ張って脱がしてやる。
ランニングシャツの下着と、トランクス一丁になった佐野の太った身体…
「ふぅ…涼しいよ…ありがとう、雄三さん…」
眠そうに礼を言い、ゴロンと再び関に背を向ける佐野。
「畳じゃ体が痛いだろう。布団で寝ろよ。俺ぁ座布団敷いてそっちで寝るからよ」
佐野の大きな尻を見ながらそう言う関の言葉に、佐野は答えない。
そして、しばらく黙っていた後、口を開く。
「…雄三さんが良ければだけど…一緒の布団で俺はいいよ…」
ドキリとする関。
「…デブふたりじゃ暑苦しいだろ…」
動揺を悟られぬよう、平静を装って応える。
「…………」
黙り込む佐野…
佐野は今の状況に、あの夜を思い出していた…
今までもこうして、互いの部屋で雑魚寝をすることはあったが…ひとつの布団で寝るようなことは流石になかった。
しかし酒に酔い…あの夜以来、和泉との淫夢を時折見て、そのことに煩悶し悩んでいた佐野にとって…今のこの状況は、まさにその煩悶の元となったあの夜と同じだった。
今夜したたかに酔ってしまったのも、ずっと続くその煩悶が原因であることも、佐野自身、分かってもいた。
「…暑苦しいかも知れんが…硬い座布団よりは…良くないか…?」
ボソボソと背中を向けたまま言う佐野…
「硬い座布団しかない部屋で悪かったな。しかし何だか急に、口調がしっかりしたじゃねえか。言っとくが、俺はあの若いのとは違うぞ?汗臭いオヤジだ」
「…!……別にそんなつもりは…」
言いよどむ佐野。
勘が鋭い関に、ズバリと自分の心情を言い当てられたことに動揺したのだ。
もっとも、佐野を愛し…いつもその姿や表情を盗み見ていた関にとっては、佐野の最近の…そして今夜の心の動きは、何となくだが感じてはいたのだが。
関にとっても、宿直室で青年を胸に抱きながら眠る佐野を見た体験は、相当な衝撃だったから。
その夜、佐野はひどく酔ってしまった。
関に肩を抱えられながら、どうにか立ち上がり、店を出る。
「ぅう…雄三さん、すまん…」
「いいって。しかし珍しいな、ヨッさんがこんなに酔っ払うの」
佐野のふっくらした身体の感触に、動揺を顔に出さぬよう平静を装いながら応える関。
「どうする。俺んち来るか?」
酒を飲んで終電を逃したときなど、互いのアパートに泊まることは、今までも何度かあった。
互いに独り暮らしだ。気兼ねすることはなかった。
「ぅう…すまん…」
「俺ぁ別にいいけどよ…」
佐野の重い身体を支えながら、関は片手を上げてタクシーを止めた…
……………
関の部屋に転がり込むように上がり、ふたりは倒れ込むように、敷きっぱなしの布団や畳の上にそれぞれひっくり返った。
「うわ…アッチぃなあ!汗だくだよ…!ヨッさん、重すぎだって…!」
締め切っていた狭い部屋は、真夏の熱気が籠もっていた。
笑いながらどうにか上体を起こし、座卓の上のエアコンのリモコンを掴んでスイッチを入れ、着ていたシャツを脱ぐ関。
関はズボンも脱いでトランクス一丁になる。
夏の間の関の、いつもの部屋での過ごし方だ。
少し冷え過ぎるくらいエアコンが効いた部屋で半裸で過ごすくらいが、暑がりの関には丁度良いのだった。
唸り声を上げてエアコンが冷風を吐き出してくる。
布団の上であぐらをかいた関は、すぐ近くの畳の上でひっくり返っている佐野に声をかける。
「おぉい、ヨッさん。気分はどうだ?シャツ脱いだ方が楽だぞ」
「ぅうん…後で…」
低く呻いて寝返りを打ち、関に背を向ける佐野。
「おい、聞けって。ヨッさんも汗でシャツがビチャビチャだろうが。そのまま寝たら風邪ひくぞ。脱げよ」
さっきまで感じていた、佐野の体の感触が早くも懐かしい。
その佐野が酔っ払って駄々っ子のようになっている。
何だか愉快になって、関は笑いながら佐野を再びひっくり返して仰向けにすると、佐野のシャツのボタンに手をかける。
目を閉じた佐野が、仰向けに寝たままされるがままになっている。
佐野のことを密かに想う関に、下心が無いはずはない…
指に感じる柔らかな胸と腹…胸がドキドキしている。
そんな関の心も知らず、佐野はされるがまま、関に身を任せている。
「うぅ…ありがとう…今日は本当にすまん…雄三さん…」
片腕で顔を覆い、小さな声で詫びる佐野。
「構わねえって。ズボンも脱がすぞ。皺になっちまう」
佐野のスラックスを脱がそうと、ベルトに手をかける関。
ふっくらした股間の膨らみに、どうしても目が行く。
関の酔いは興奮のため、覚めかけている…
ベルトを緩めてスラックスのボタンを外し、ファスナーを下ろす…
指に触れる佐野の股間の膨らみ…
くそ…本当に…可愛い奴だよ…
関のトランクスの股間はテントを張っている…
酔い潰れた佐野には気付かれまい…
ズル…ッとスラックスを脱がす。靴下も引っ張って脱がしてやる。
ランニングシャツの下着と、トランクス一丁になった佐野の太った身体…
「ふぅ…涼しいよ…ありがとう、雄三さん…」
眠そうに礼を言い、ゴロンと再び関に背を向ける佐野。
「畳じゃ体が痛いだろう。布団で寝ろよ。俺ぁ座布団敷いてそっちで寝るからよ」
佐野の大きな尻を見ながらそう言う関の言葉に、佐野は答えない。
そして、しばらく黙っていた後、口を開く。
「…雄三さんが良ければだけど…一緒の布団で俺はいいよ…」
ドキリとする関。
「…デブふたりじゃ暑苦しいだろ…」
動揺を悟られぬよう、平静を装って応える。
「…………」
黙り込む佐野…
佐野は今の状況に、あの夜を思い出していた…
今までもこうして、互いの部屋で雑魚寝をすることはあったが…ひとつの布団で寝るようなことは流石になかった。
しかし酒に酔い…あの夜以来、和泉との淫夢を時折見て、そのことに煩悶し悩んでいた佐野にとって…今のこの状況は、まさにその煩悶の元となったあの夜と同じだった。
今夜したたかに酔ってしまったのも、ずっと続くその煩悶が原因であることも、佐野自身、分かってもいた。
「…暑苦しいかも知れんが…硬い座布団よりは…良くないか…?」
ボソボソと背中を向けたまま言う佐野…
「硬い座布団しかない部屋で悪かったな。しかし何だか急に、口調がしっかりしたじゃねえか。言っとくが、俺はあの若いのとは違うぞ?汗臭いオヤジだ」
「…!……別にそんなつもりは…」
言いよどむ佐野。
勘が鋭い関に、ズバリと自分の心情を言い当てられたことに動揺したのだ。
もっとも、佐野を愛し…いつもその姿や表情を盗み見ていた関にとっては、佐野の最近の…そして今夜の心の動きは、何となくだが感じてはいたのだが。
関にとっても、宿直室で青年を胸に抱きながら眠る佐野を見た体験は、相当な衝撃だったから。
更新日:2018-12-10 01:15:16