官能小説

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和泉くん

「…突然で失礼しました。来ていただいてありがとうございます」

大牟田と和泉が並んで腰掛けているテーブル席に、仕事を終えた佐野がやってくると、大牟田はスッと立ち上がって頭を下げた。

「あ…いえ…こちらこそ…」

緊張からか強張った表情の佐野だったが、以前会ったときと同様、きちんとした身なりの堂々とした大牟田に頭を下げられて、少しうろたえた様子を見せた。
その佐野を和泉は大牟田の隣に腰掛けたまま、そっと見上げている。

「正己もどうもスッキリしないまま、あなたのところから帰ってきたようなので」

そう言いながら腰を下ろす大牟田。
佐野もテーブルを挟んで腰を下ろし、やってきた店員にコーヒーを注文する。
暫く黙って向かい合う佐野と大牟田。
和泉は大牟田の隣で落ち着かない顔で小さくなっている。

「…正己だけじゃない…私もスッキリしないんです。このままではね」
「…………」
「私にとって…正己の存在はより大きなものになってしまっています。当初私が想像していた以上にね。あなたが正己を放っておいた間に…です」

和泉は佐野を盗み見る。
佐野は緊張した面持ちで大牟田の話を聞いている。

「私も…もう一度ちゃんと和泉くんと話したかった。あの日は突然すぎて…だからこうして話せる場を設けていただいて、礼を言わなきゃならないのは私の方です」

和泉の方をチラリと見て、大牟田に向かって頭を下げる佐野。

「和泉くんも…済まなかった。君から会いに来るまで放っておく形になってしまって…会いに来てくれた日も…何も話せなくて…」
「……………」

和泉に語りかける佐野。
和泉はただ黙ってそれを聞いている。

「夜に電話したけど…繋がらなかった。出てくれないってだけで…恐くなってそれから電話できなくて…本当に情けない…」

佐野をただ見つめている和泉。
佐野の声は小さかった。
大きな身体を丸めるように小さくしてうなだれている佐野…

「正己…どうした。何か言うことはないのか?」
「…………」

大牟田に促されても、和泉は何も言えなかった。
うなだれた佐野の姿を、ただ見つめていた。

「…この前は急で…ごめんなさい。びっくりさせちゃって…」

それだけを辛うじて和泉は言った。

「でも…待っていたのに佐野さん、全然連絡くれなかったから…」

口を衝いて出た言葉。
涙ぐんでいる自分に和泉は驚く。

「ごめん…」
佐野はもう一度頭を下げる。

「ずっと待っていたんだよ…?それとも僕がもっと…僕からもっと話を聞きたいって言えばよかった?」
「…いや…それは…」

佐野は膝の上で拳を握り締める。
和泉の声が震えているのに気づくと、顔を見ることができなかった。
自責の念が胸に渦巻いた。

でも言わなければならないことがある…
だから…大牟田の前だろうと言わなければならない…
大牟田にセッティングしてもらったような、この場でさえ…

「和泉くん…会えずにいた間もずっと…俺は君のことを想っていた。それは本当だ。信じてくれ」

カップを乗せたトレイを手に、店員がやって来る。口を噤む佐野。
カチャリと佐野の前に置かれるカップを見つめる3人。静かに立ちのぼる湯気が揺れる。

店内には自分たち以外に客はいない。
歩み去った店員がカウンターの奥に引っ込むのを遠目に見ながら、佐野は再び口を開く。

「…信じてくれないかも知れないが…本当なんだ…」
「…想っていても…バーで一緒だった人と寝たり…同僚の人と寝たりできる…?」
「…………」

静かな和泉の言葉に再び俯く佐野。

「優柔不断なんだな…俺は……情けないよ、自分が…」
「ううん…佐野さん、優しいから…元々ノンケだし…」

うなだれている佐野が気の毒になり、和泉は思わず言っていた。

「優柔不断なのは僕も同じだし…この前も駅で言ったけど…」
「…………」

大牟田は和泉の横で、カップを口に運んでいる。
その大牟田を横目で見ながら和泉は言う。

「…佐野さんを好きだって言いながらも大牟田さんとしたり…僕も同じなんだ、きっと」
「……私も…正己があなたを好きだと言うことを知りながらも…この子を抱いた。ある意味卑怯な大人なんだと思います」

大牟田も静かに言い、カップを置く。

「最初はスケベ心からだった。可愛らしくてタイプだったから…言葉を弄して正己を抱いた。私のことを正己はさほどタイプではないことは知っていたけど…そうだったよな?」

そう言って隣の和泉に笑いかける大牟田。
和泉は涙ぐんでいた目を指で拭いながらも顔を赤くする。

「…佐野さん。でも私は本気になってしまった。正直私も遊び人で…浮ついた人間だったと思う。でも…この子と暮らして何度も寝て…私のものを受け入れて次第に私の身体に馴染んできているこの子が…今、本当に愛おしいんです」

大牟田の顔は少し赤く見えた。
和泉はそれ以上に顔を赤くしていた。
佐野は黙り込むしかなかった。

更新日:2019-12-14 00:49:42

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