官能小説

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ふたり

その夜、佐野は強引な純に誘い出され、男たちが集う夜の街の小さなバーで飲んでいた。

断りきれない優柔不断な自分…
勤務先まで押しかけて来られては仕方がないとは思いながらも、こんなに短期間に色々な男たちと出会い、身体を重ねている自分を、佐野は酒と共に顧みる。

純は楽しそうにカウンターの中の男たちと話しながら、時折佐野の肩にもたれかかってみせたり、その腕を取り、自分の腕を絡めたりしている。

佐野は純の好きにさせている。
自分の感情を包み隠さず素直に表している純…
決して嫌な訳ではない。可愛らしいとも思う。
同じ年代でもシャイで気持ちを推し図りにくくもあった和泉との対比だろうか…
“あった”と過去形で思考している自分に気付き、佐野はまたグラスを口に運ぶ。

その時、店のドアがカランコロンというチャイムの音と共に開いた。
入ってくる二人連れを視界の隅に捉え、佐野は動揺する。
スーツ姿の大柄な男…大牟田の陰に隠れるように、和泉が入ってきた…

…………

「おや…?…佐野さん…ですよね?」

先に声をかけてきたのは大牟田だった。
カウンターに和泉と並んで腰掛けて、おしぼりで手を拭いていた大牟田が、数席離れたところにいた佐野に驚いたように声をかけてきた。

佐野から見て和泉は大牟田の向こうに腰掛けており、よくは見えなかったが、大牟田の声にビクッとしたように、カウンターに身を乗り出してこちらを振り返った。

「………久しぶり…だね」

佐野はひどく緊張しながら和泉に言った。

「………佐野さん…」

和泉はそう言うと、絶句して固まった。

「…今日は…そちらの素敵な子とデートですか」

大牟田は佐野の向こうにいる純を見て言った。

「え?僕?素敵?あはは、嬉しい!お父さん、聞いた?そうだよね?デートだよね?」

純が腕を絡めてくる。
和泉の前で…なんてこった…
関とのことに加え、こんなところを…
佐野は和泉の方を見ていられず、カウンターの中に視線をさまよわせるしかなかった。

「正己。佐野さんと会うのは久しぶりだろう?あの例の嵐の夜以来か」

頷く和泉。
大牟田は和泉から聞いて、全て知っているのだろう…
グラスの中身をごくりを音を鳴らして飲み込む佐野。

「へえ…あの子が前に話してた子なんだあ。想像したとおり、純朴そうで可愛くて…良い子じゃない」

純にも以前、こうして酒を飲みながら、聞かれるがままにことの経緯を打ち明けた…
和泉の横顔が強ばっているのが分かる。

「でも…確かあの夜に佐野さんの部屋で正己が見たのは、佐野さんと同じような年代のオジサンだったんだろ?熊みたいに太った毛深い…。佐野さん、どうしたことなんだろうなあ?」

和泉に問いかける大牟田の声。
決して大きな声ではないが…大牟田の低い声はよく通る。
和泉は混乱しているのか、その頭で必死に思考を巡らせているのか、俯いたままだ…

あの夜、駆け込んだ佐野の部屋で見た光景…
そして今、自分と同じような年格好の若者と、夜の街の店にいる佐野…

駅のホームで毎日見ていた駅員さん…
穏やかに朝日の中で笑っていた、眼鏡をかけた丸顔の優しい駅員さん。
白いシャツのお腹がぽっこりと丸くて…スラックスのお尻を…高校生の自分は胸をドキドキさせながら盗み見ていた…

久しぶりに会った佐野は…今の佐野は…あれから変わっただろうか…?変わってしまったのだろうか…?
間違いなくノンケだったはずの佐野に…色々あったに違いない。
自分だって大牟田と同棲して…モテ筋なことをいいことに浮気症な大牟田に不安を抱えながら、なんとかしがみついている…

あの頃とは違う…
あの頃に戻れたなら…

和泉の鼻の奥がツンと痛んだ。
涙が滲んでいる自分に気付き、慌てて指で涙を拭う和泉…

「…大牟田さん…ごめんなさい…出たい…ここ…この店、出よう…?」

混乱から逃げるように、和泉は大牟田に言った。

「…そうか…まあ…正己が言うなら仕方がないか。分かった、出よう。家に帰ろうな、正己…」

佐野に聞こえるよう…和泉に優しく言って肩を抱くと、大牟田はカウンターの中に会計の目配せを送る。
その親しげな様を見て、佐野は胸を締め付けられる。

「大丈夫?お父さん。飲みすぎちゃった?ちょっとややこしくなっちゃったもん。仕方ないよね」
「…済まない…少し…少しだけ静かにしてくれないか…」

佐野は小さく呟くと、グラスに残った苦い酒を飲み干して、カウンターに片肘をついた手を額に当てて、暫し目を閉じる。
大牟田と和泉は、そんな佐野に背を向けて店を出てゆく…

……………

「正己…逃げるんじゃない…ここを舐められるのは嫌いじゃないだろう?ほら…気持ちいいか…?」
「は…うあ……くッ……ん…」

更新日:2019-10-18 00:11:24

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