官能小説

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揺らぎ

和泉は電車に揺られながら、思いを巡らせる。

あの夜の出来事…
最初から意図していたわけではない…酔い潰れてしまっていたのは事実だ。

でも、駅に着いて佐野に起こされ、肩を貸してもらって立ち上がり…佐野の大きな体の柔らかな感触と、ふんわりとした優しい匂いを感じた時…ドキッとして一瞬正気を取り戻したのを覚えている…

そして次に気付いた時…
思いがけず宿直室で佐野と二人きりになっている状況と、そして、下着姿の佐野が椅子に座って腕を組んだ姿で眠りこけているのを見て、胸の鼓動が早まった…

白いランニングシャツから覗く肉付きの良い丸い肩…そこから続く太い二の腕…
俯き加減で眠っている胸と腹が、ゆっくり上下していた。

そしてトランクスの股間の部分…
眠っているうち、腰が椅子の前の方にずれてきたためか、トランクスが佐野の股間に食い込んでいて、下着の中のものの量感を浮かび上がらせていた。

暗がりに浮かぶその膨らみ…
制服姿の佐野しか知らなかった目に、そのあられもない佐野の姿は、ひどく刺激的に写った。

太い腕や、むっちりとした太ももに触れてみたい…
その衝動を押さえながら、微かに鼻先に漂う佐野の汗混じりの体臭を、そっと記憶に収めた…

それから先の出来事は…本当に幸運だったとしか言いようがない。
よろけて抱きつく形になったのも、決してわざとではない…

結局は佐野の優しさに救われたのだろう…
その優しさにつけ込む気持ちが自分に全くなかったかと問われると、自信はないが…ひとつのベッドで一緒に寝るという、思いもしなかった夜を過ごすことが出来たのは、本当に幸運だったとしか言いようがない。

和泉は電車の窓の夜景を眺める。
ドアの近くで立ち、吊り革に掴まって帰路についている和泉。
もうすぐ自宅のある駅に着く。そこには佐野がいるはずだ。

あの夜以来、駅で佐野と会うたび、和泉は戸惑ってしまう。
自分が同性しか愛せない人間であることを初めて告白した相手…そして自分が密かに想いを重ねてきた相手…

まだ若い和泉は、どう振る舞えばよいのか分からずにいた。
だからなるべく今までと変わらぬよう、ただ朗らかに挨拶をして、戸惑いをやり過ごすしかなかった。

一方の佐野は、和泉を胸に抱いて目覚めた朝、自分が激しく勃起していたことに戸惑いながら、そんな和泉の挨拶に毎日応えていた。

和泉がもし、佐野があの朝、寝惚けながらとはいえ、自分を胸に抱いていたこと…そして、そうしながらペニスを勃起させていた事実を知っていたら…
和泉と裸で抱き合う夢を見た佐野が、煩悶していることを知っていたら…
話は早く進展したかも知れない。

でも二人は今はただ、幾分ギクシャクしながらも、今までどおり、駅で短い言葉を交わすだけ…それだけだった。

……………

和泉は自室のベッドでペニスを扱いている…
佐野の笑顔を思い浮かべる。制服に包まれたむっちりと丸みを帯びた身体を思い浮かべる。

そしてあの夜見た、下着姿の佐野…
密かに嗅いだ体臭…
トランクスから伸びたむっちりした太ももと、その股間の膨らみ…

頭の中の佐野を裸にしてゆく…
服を脱いだ佐野と一緒に、ひとつのベッドにいる自分…
ずっと秘めていた想いを告白した自分に、優しく微笑む佐野…

「…こっちにおいで」
いつもの優しく低い声で囁き、太い腕で抱きしめてくる佐野…
裸の柔らかな胸に抱かれる…
体毛が薄く色白の、柔らかな佐野の身体…

今まで幾度となく思い浮かべた佐野の肉体…
それは、あの夜に半裸の佐野の姿を目にし、ひとつのベッドで寝て、その温もりや匂いに触れてから、より具体的になった。

宿直室の暗がりに浮かび上がっていた、トランクスの股間の膨らみ…
和泉の頭の中の佐野は、もはやそのトランクスも身に着けてはいない。
太いペニスを屹立させ、同じく丸裸の自分の上にのしかかってきて、抱きしめてくる。
自分を見つめる佐野の笑顔…
いつもどおりの優しい笑顔…

身体に感じるその佐野の温もりや重みを想像し…和泉は右手を動かす。
性体験を未だ知らない和泉は、それ以上の想像ができない…
もちろんネットなどで、男同士の性愛の様を目にしてはいる。
口や肛門を介した性愛…

しかし和泉には、佐野とその行為に及ぶ自分を、まだ想像できないでいた。
頭の中で、自分にのしかかる佐野が、その熱く滾る性器で体内に押し入ろうとするのを想像するが…
痛みへの恐怖、そして男同士が性器と肛門で身体を繋ぐ意味…それらの理解が追い付かず、興奮に結び付かないでいた。

今はただ、佐野の裸を想像し…普段の真面目な駅員としての顔とは違う、少し助平な…男としての本性を露わにしたような顔で笑い、ベッドの上の自分を抱きしめてくる佐野を想像するだけで、和泉は胸を高鳴らせている…その性器を硬く張り詰めさせている…

更新日:2018-11-29 23:57:56

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