官能小説

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ホーム

今日も暑い一日になりそうだな…
早くも入道雲が見える朝の青空。
東から照り付け始める太陽の日射しを、制帽のつばを下げて除けながら、上り線のホームに立つ佐野善雄は思った。

蒸し暑さに、制服の半袖シャツの背中が早くも汗ばんでいる。
太っていることもあり汗っかきで、夏はタオルが手放せない。
黒いセルフレームの眼鏡を外し、顔をタオルで拭き、首すじを拭く。
汗臭くなっていやしないかと、自分の胸元や脇の辺りをそっと嗅いでみる。
…大丈夫のようだ…
客商売だからな…エチケットは大切だ。

…佐野が駅員として勤める小さな駅。
郊外のベッドタウンを繋いで走る路線の小さなこの駅は、都心へと向かう通勤通学客が主な利用者だ。

都心のターミナル駅のようにせかせかしていない、ちょっとのんびりした時間が流れるこの小さな駅での勤務を、佐野は気に入っていた。
もう何年も異動もなくここに勤務しているが…できることならこの駅に当面いてもいい。何なら定年までいたって…そう50代前半の佐野は思う。

…この年になるまで、特に出世欲もなく生きてきた。
それは一度も妻帯せず独身だったせいもあるだろうが、一駅員として利用客と現場で接しているのが、自分の性に合っているからだ…そう佐野自身は思っている。

線路の向こうから踏切の音がして、レールが鳴る音が近づいてくる。
ホームに滑り込んでくる短い電車。
さほど混んではいない。開いたドアに、ぽつぽつと客が乗り込んでゆく。

「おはようございます」
背後から声をかけられ、振り返る。

「おぉ、和泉くん。おはよう。今日は早いんだね」
「はい。今日は一コマ目から講義があるんで」
笑いながら言う青年。

…まだあどけなさの残る高校生だった頃から、佐野はこの和泉正己を知っている。
ホームのベンチでポツンと、早朝の列車を毎日ひとりで待っていた高校生の和泉…
人懐っこい性格なのか、ほかに客もいないホームで、箒とちり取りで掃除をしていた佐野に、和泉の方から声をかけてきたのだ。

そうして会うたび言葉を交わしているうち、名前や通っている高校、頑張っている部活動、合格して通うことになった大学…そんなことまで佐野は知るようになった。
あの制服姿の高校生も、今はこざっぱりとした服装の、爽やかな好青年だ。

…こんな利用客との触れ合いがあるから、俺は駅という現場で仕事を続けたいと思うんだろうな…
和泉を乗せた電車が、線路の向こうのカーブに消えてゆくのを見送りながら、佐野は思う…

…………

「よぉ!ヨッさん、お疲れ!今日も暑かったなあ!」

ある夜、駅のシャッターを閉めた後。
その日は当直勤務である佐野が当直室に向かっていると、保線所作業員の関雄三のガラガラ声が後ろから飛んできた。

「ああ、雄三さん、これから夜間巡回ですか」
振り返る佐野。作業服を着た関が、安全帽を脇に抱えて笑っている。

「いや、俺は今日はこれで上がりだ。もう汗臭くて堪らんよ。さ、風呂だ、風呂だ」
作業服の前のファスナーを開いてバタバタと風を中に送るように扇ぐ関。
佐野と同じくらい太った体に、汗の滲みたシャツが張り付いている。

佐野の勤務するこの駅には、隣接する保線所の現業事務所と共に利用する浴室があり、当直の駅員や保線所の作業員が一息つく場となっている。

関は佐野よりいくつか年上で、同じく独り者だ。
この駅に勤務するようになって間もなく、風呂場で顔を合わせているうちに関から声をかけられ、他愛ない話をするようになった。

脱衣所に入って服を脱ぐ佐野。隣で関も脱ぎ始める。
色白で体毛も薄くぽっちゃりした佐野と、毛深くて浅黒く日に焼け、ガッチリした固太り体型の関。

「ヨッさん、また少し太ったんじゃないか?」
関が佐野の腹の肉を軽く掴み、からかうように言う。

「ちょっ…雄三さんだって人のこと言えないでしょう」
くすぐったそうに身をよじって関の手から逃げ、笑って言う佐野。

そのまま浴室に入り、洗い場でそれぞれ汗に汚れた身体を洗い始める。

…関はよく、こんなふうに佐野をからかうように体に触れてくる。
それを佐野は、子供の頃から太めだった自分が、よく友人たちから受けたからかいと同種だと受け止めていた。

つまり、さほど快いものではなく、できれば止めてほしいものではあるが…慣れてもいるし、目くじらを立てて拒否する類のものでもない…という認識だ。

でも…当の関はそうではない…
関は横目や鏡越しに、佐野の泡だらけの色白の柔肌を盗み見ている。
…しかし、それはまだ、佐野の知るところではない。

佐野は気分良く身体を洗い、立ち上がると湯船に向かう。
股間を覆ったタオルの隙間からチラリと見えた、脂肪に埋もれ気味の佐野の性器を、関は盗み見ている…







更新日:2018-10-06 07:47:28

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