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ぷろろーぐ

剣と魔法、未知と冒険
数々の罠や魔物をかいくぐり
ダンジョンの奥に眠るお宝を目指す

そんな冒険を生業とする人たちを冒険者と呼ぶ

僕が住んでいるのはそんな冒険者が集まる都市だ
なにせ都市の周りをぐるりと様々なダンジョンが囲み
その地下には未だ前人未到の地もあるという

この国に正式な名はない。
迷宮都市、それで通じるのだから

その名前は伊達ではない
周囲をダンジョンに囲まれているからだけではなく
都市を囲う城壁の外側に広大な迷路が広がり

さらに都市自体の作りが迷路そのもののためだ

僕の名前はハル。
日がな一日ダンジョンに潜り、毎日の生活費を稼いでいる
でも別に僕は冒険者という訳でもない
オークやコボルトに出会えば一目散に逃げ出すし、
ダンジョンの罠を解除するなんてとてもじゃないが無理だ
では何しに潜るのかといえば

配達である

ダンジョンには決まってる場所に同じ魔物(モンスター)が生息し
それを刈る事で生計を立てているプロの冒険者が多い

いわゆる狩場を狙った冒険者は大体顔なじみで
僕は彼等に伝言を届けたり、彼等の荷物を街まで運ぶ
配達屋を営んでいる

まあ、あくまで自称配達屋で配達ギルドに所属する訳でもなく
ただのアマチュアなのだが

配達ギルドにいる友人からは何度か誘われてはいるのだが
何のスキルも持たない子供である僕が
ギルドに入ったとしても足を引っ張るだけではないか?
それに仕事のノルマが有るという話も聞き
時間に縛られるのではないかという不安もあり
なかなか決断が出来ず、今に至る

せめてスキルでもあれば、
そう思うもののこれが厳しい

スキルは自分が行動して心の奥、体の奥にためた経験値を
魔術を介して編集、最適化することで自分の中に固定化するものだ

そうする事でそれまで自分で行った最も良かった状態をいつでも引き出せ
さらに効率よく動けるようアジャストしてくれるのだ

一部では魔術式を使わずに魔術と同じ事までできたりするらしい

そんな便利な物がありながら僕が未だに手を出さない理由

それはお金だ
世知辛い話、僕にはお金がない。清貧だ

スキル固定化の大前提にギルドカードという物が必要になる
自分の内面にある経験値というあやふやな物を外からいじる為に
触媒となるもの
らしい
受け売りなのでよくはわからないが
そしてその魔術道具でも有るカードが一枚で銀貨3枚という

これは食費にしてウチの2週間以上に当たる
何とか工面して貯めてはいるものの、いざという時に使う為
いくらかは別に残さなければ
そう思うと2年3年ではどうにもならないことだ

「お金、稼がないとな…」

今日もダンジョンに戻っていく

更新日:2018-11-03 02:19:25

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