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 眠れないまま、数日が過ぎた。



 自分の荷物もほとんど片付いて、あとは

就職先のアパートに引っ越すだけ。



 壁に残っているカレンダーをぼんやりと

見ていると、携帯が震えた。





”入社式について”





 そう送られてきたのは、この春から俺が

務める会社の人事課からのLINEだった。









 「やったよ!!」、



 あいつは、携帯を握りしめてぽろぽろと

涙を流した。



 4年の春。



 あっとゆう間に、内内定を取った俺の

就職先に、何度も何度もチャレンジをして

最終募集で、見事に内定を取った。



「これで、ずっと一緒にいれるね」、



 そう言って、本当に嬉しそうににっこり

笑って俺の腕の中で泣いたのに、









「辞退した?」



 入社式の受付にいた、人事担当者から

聞かされてその言葉の意味が分からなくて





「なんで・・」、



 ずっと、オリエンテーションで面倒を見て

くれていた担当の春日さんに詰め寄ると





「個人情報だから言えないけど、年が変わって

直ぐだったかな、電話があってね・・」、



 騒がしい受付のそばを離れるように、俺に

目くばせをして、春日さんは電話を掛ける振り

をしながら歩き出し





「病気が分かって、治療に専念するからと

だから、大学の仲間にも内緒にしてくれと

お願いされたのよ・・」、



 電話に話しかける振りをしながら、そう

教えてくれた。





 「私さ、ほらこれだから月に一度病院に

行くんだけど、2月に検診に行ったときに

彼を、見かけて・・」、



 「ど、どこでですか?」、



 思わず大きな声を出した俺の足を、春日さ

んは思いっきり踏んで





 「歓迎会の後ね」、



 キッっと、にらみを効かせてその場を離れ

ていった。



更新日:2018-09-06 13:06:53

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