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小説

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プロローグ

 衣擦れの音が部屋に響き、熱く大きな固い手が細い腰を掴んで引き寄せた。

「んあっ! あっ、ああっ!」

 尻臀が振動で揺れ、体の中で動く熱の塊は栢野智史の理性をその都度、砕いていく。

「智史……、今日はすごいね」

 背中で男の声を聞きながら、栢野はシーツをキツく握りしめた。自身のペニスの先端は真っ赤に充血し、今にも弾けてしまいそうなほど膨張している。ポタポタとシーツの上に淫らな染みを落としながら、潤んだ瞳で滲んだ景色を見た。

「あ、ふっ……んっ、んっ……あああっ!」

 ひときわ大きく穿たれ、神経をドロドロに融かされたような快楽に目を閉じて、艶めかしく背中をしならせた。体の最奥で広がる濡れた感覚に背筋を震わせ、腰を上げた状態で自分の体を支える太腿も、甘い痺れにブルブルとみっともなく揺れる。

 後孔に埋められていたペニスがズルリと引き抜かれ、それと同時に内股を流れるのは劣情の痕跡だ。酸素を求めて喘ぎながら、栢野はベッドの上へ力尽きるようにドッと倒れた。

「……智史、今のはドライだったのか? そうだよな。あれだけ出せば、もう出るものもないか」

 ギシリとベッドが軋み、今まで栢野を蹂躙していた男はその縁に腰掛け、煙草に火を付けたようだった。馴染んだマルボロの匂いが辺りに広がり、この匂いを嗅ぐと、終わったな、という感じがして少し寂しくなる。脱力して息の整わない栢野は、紫煙が立ち上っていくのを眺めていた。

 安っぽい絨毯と少し時代遅れの壁紙。気持ちだけの小さなソファセット。狭い部屋の中にはベッドだけが大きく存在感を放っている。天井には普通のホテルにはない大きな鏡が設えられてあり、淫らな行為の痕跡を映し出していた。

「ねえ……今日はどうしたの? いつもよりしつこいし、回数だって多いし。俺、出なくなるまでされて、ドライでイクなんて初めてなんだけど」
「……あはは。そうだったか? 智史は感度がいいから、いつだってドライでイケたんじゃないのか?」

 どこか投げやりに感じる声の調子に、栢野は重怠い体を起こした。ペニスを抜いただけで残滓が零れたそこから、さらに腹に残っていたものが流れ出す。不快感に顔を歪めれば、横目で栢野を見た彼が手を伸ばしてきた。無遠慮に額に触れられ、汗で張り付いた前髪をそっと分けてくる。

「本当にどうしたの? 終わったあとに、こんなことする人じゃないでしょ?」
「ああ、そうだな。今日はなんとなく……。それにしても智史はかわいいな」

 そう言ったきり彼は黙り込んだ。そしてゆっくりと味わうように煙草を一本吸い終わると、小さなため息を吐いた。

更新日:2018-08-29 01:20:39