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 スミスはいくぶん興味深そうにそうつぶやいて黙った。





 だが老住の方は、そんな師匠の言葉など全く聞いていなかった。
 彼はその場でケントと格闘を始めて、腕や足を使って相手を倒そうと揉み合っていたのだ。

 それを見てもスミスは警備を呼ばなかったので、二人の対決はしばらく続く事になった。



 ケントはそれまで人と争ったりした経験は無かったので、どう動けばいいのか分からないまま戦っていた。
 だが生来の勘のようなものを持っていて、相手の攻撃に簡単に打ち負かされたりしなかった。たとえ殴られても、それを決定打にはさせない防御術をとっさに発揮していたのだ。

 しかしスミスに助けを要請しているのに誰も部屋に現れないせいで、精神的圧迫を感じていた。
ケ「何とかして止めて下さいよ。こいつは狂ってる。‥誰か、レイクを外に出せ!医者はどこへ行ったんだ」
 その直後に腹に一発を食らい、青年は床に仰向けに倒れた。
 だが倒れたのがレイクの体の上だったので、堅い床に打ちつけられて大きなダメージを受ける事なく済んだ。

 乗られた少年の方も、どうやらそれで意識を回復したようだった。床に寝そべったまま、再びうめき声を発し始めた。






 青年は起き上がって体勢を立て直し、老住の次の攻撃に備えて身構えた。
 その体の陰でレイクも上体を起こし、意識をハッキリさせようと頭を振った。


 再び老住が邪魔者を排除しようと、ケントに組みついて攻撃を始めた。柔道のような絞め技を繰り出し、腕を首に巻いて床に落とそうとしていた。
 少年は二人の戦いの様子を呆気に取られて眺め、それから床に手をついて起き上がろうとした。
 だがそれまでしていた行為のせいで、彼は上手く腰が立たなかった。それで床を這っていって部屋の端を目指し、壁の力を借りてやっと立ち上がるのに成功した。
ケ「レイク、外に出てろ」
 ケントが少年に気づいて、急いでそう言った。
 彼は何とか老住の腕を手で止めて、自分の首が絞まるのを防いでいた。
 しかしその反撃も長くは続かなさそうだった。もはや力の限界に達していて、その事を切迫した声音で少年に分からせようとした。

更新日:2018-08-04 10:21:50

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ORIGIN180E L.A.編 4