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喪失感

 レイクはケントと共に実験室にいて、それまでの眠りを突然、乱暴に破られた。
 彼は床に落ちた時に舌を噛んでしまったので、それが気道を塞いでしばらく息を詰まらせた。
 背中を曲げた少年は、呼吸をしようと口を大きく開けた。


 その彼の横に、老住が仁王立ちで立っていた。
 教授は何故か憤怒の表情をしていて、床に寝そべるレイクを躊躇なく蹴りつけた。
 びっくりしたケントが身を起こし、そんな教授を台の上から押さえた。しかし老住は相手を一睨みして、体にかけられた手を乱暴になぎ払った。
老「言う事を聞かないからだ。ただの道具のくせに」
 そう吐き捨て、教授は再びレイクを思いきり蹴りつけた。
 少年は床を滑って部屋の半分ほど移動し、頭を中心にぐるりと一回りした。そしてうめき声を発しながら、床に伸びたまま動かなくなった。
 老住はずんずん歩いていって、そんなレイクにまた攻撃を加えようとした。
老「さっさと起きないか!」


 ケントは急いでベッドを下り、レイクと老住の間に立って攻撃を防いだ。
 彼は少年をかばうようにして抱いて老住から遠ざけ、スミスのいる天井へ向けて怒鳴った。
ケ「一体、何事です。彼は何故いきなり、こんな暴力を振るうんだ?あなたの命令なんですか」




 するとやがて、天井のスピーカーから声が返ってきた。
ス「老住君、やめなさい。腹いせに少年に当たるのは良くない。君はレイクに気持ちを依存し過ぎているようだな。彼は君の親でも恋人でもない。抱いて慰めてくれと言うんならまだしも、そんなふうに暴力をふるったんじゃ、誰もが君の本心を慮ってはくれないぞ」
老「こいつは私の物だ。カジマの謎が解明したのなら、今すぐ殺したって構わないはずだ。あなたにもう用はないんでしょう?」
 そう言って少年を見下ろし、さらに続けた。
老「レイク、お前は死にたいんだろ。だったら私が一思いに殺してやる。望み通り、永久に私の前から消滅させてやる」
 ケントは相手の前に立ちはだかりながら、呆れ顔で尋ねた。
ケ「気でも狂ったんですか、あなたは」
ス「それが君の愛なのかね?立派なもんだ。突然、降りていって何をするかと思えば‥」

更新日:2018-08-04 09:31:31

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