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本当の主人公

 ケントはカジマ情報の解読を自分だけに任されて、実験室でその作業をしていた。
 朝方、医者がやってきて突然レイクを部屋から連れ出していった。理由を聞くと、体の治療や検査をするためだと言われた。
 その時レイクの中にいたルーは、少年から出てケントの脳内に避難した。コンピューターを使った精密検査をされた場合、見つかってしまう恐れがあったからだった。


 それ以来、彼はレイクの事がずっと気になっていた。もう一日が終わりそうなのに、まだ帰ってきていなかったのだ。
 『検査にそれほど時間がかかるものなのか?あいつは今頃、どこでどうしているんだろう‥』と、だんだん心配になってきていた。






 青年は作業していた手を止めた。
 念のために一旦コンピューターの装置を切ると、こっそりルーと話を始めた。

 ───レイクがどこにいるか、分かったか?

 ───この建物にはいないみたい。彼の生体反応が無いもの。

 ───何かひどい事をされてないだろうか。

 ───分からない。戻ってきたら調べるしかないわ。どんな検査をされたのかすぐに分かるから、それを報告します。



 やがて消灯時間が来てしまった。ケントは心配を抱えたまま、実験室で一人眠った。
 たくさんの夢を見てうなされる状態が続いた。ルーは青年を出来るだけ安定させようとしたが、レイクを再び見るまでは落ち着けないようだった。









 だが翌日になってすぐ、レイクは何事もなく部屋に帰ってきた。
 少年はケントと再び作業を開始したが、何を聞いても答えようとしなかった。

 青年は相手をルーに見せたくて、ずっとイライラしながら我慢していた。機械をオンラインにして使っている時は、危険すぎて彼女を表に出す事が出来なかったからだ。




 そのため彼は、自分の口で昨日の事をあれこれ質問した。
ケ「本当に大丈夫か?変な実験をされたんじゃないのか」
 レイクは首を振った。
 少年の表情は平静だったが、ケントは何か微妙な変化があるのを感じ取っていた。心の奥底に怯えを抱いているような感じに見えたのだ。


 それは八年前の夏休み、レイクが本島から帰ってきた時に通じる感覚だった。

更新日:2018-08-16 12:04:46

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ORIGIN180E L.A.編 4