さらに少年は、「ルーを貸してくれれば、何とかレイクかユースと連絡が取れるかもしれない」とも話した。
　他のやり方ではそこまでの成果は見込めそうになかったので、コメットは少年にその作業をさせ、他のコンピューター技師やオペレーターには、その補助などをさせた。


　そうして一連の操作をした後、少年は自分の仕事が上手くいったかどうか確かめる術がなかったので、コメットに意見を聞いたのだった。
　コメットはチョースの座る機器のそばに立って、作業の様子をじっと眺めていた。
　少年の椅子の後ろには、ユネストが椅子に座った状態で頭に電極線のような物をつけていた。彼は頭の中のチップに直接電流を繋げ、そこからルーの本体を取り出した所だった。
　彼の中にあるチップ自体は移動しなかったのだが、今ではその内部にいた人工知能が、ほとんどその存在を空にしていた。
　コピーして同じ物を転送する事も出来たが、ＥＵの回路は同時に別の場所で同じだけの効力を発揮するのは無理だった。そのため主要器官が転送された今では、ルーはロスアラモスの方に大部分の機能が移転していたのだ。


　彼の頭の中でルーがしゃべる事もなくなったのか、ユネストは不機嫌な顔をしていた。
　ルーに関しては彼に聞くのが一番早かったので、コメットはかたわらに座る医者に、少年からの質問を振った。
コ「分かるか？ユネスト」
　ユネストは不満げに鼻を鳴らし、そんな主任に文句を言った。
ユ「俺に分かる訳がなかろう？ルーがいないんだから」
コ「代わりのチップは入ってるだろ。そこからある程度の情報は得られるはずだ。‥言い出したのは貴様のはずだぞ。息子を助けたいんじゃなかったのか」
ユ「助けたいとは言ったが、ルーを差し出すなんて言ってない。君らが寄ってたかって、無理に彼女を担ぎ出したんじゃないか」
チ「一応、成功はしたのかな。ドクターの中にルーがいないのはハッキリしたから」
ユ「これでは彼女が途中で抹殺されても、分かりようがないじゃないか」
　そう言ってユネストは立ち上がろうとしたが、近くにいたカンムがそれを押さえた。