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小説

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176・  内の人浮気はしないのロイヤルホスト(2004)〜

挿絵 548*405

176・   内の人浮気はしないのロイヤルホスト
         (うちのひと うわきはしないの ロイヤルホスト)

 客の主婦グループはテニス派と雑談派に分かれている。私は校正原稿をチェックするのに疲れると、雑談派の話に耳を傾ける。浮気をしないと断言できる夫は安心だというのか。魅力がないから自分は浮気をするというのか。浮気話は食事のツマになっている。

 (2004・2・3、さいたま市)



177・   果てしなく旋回する鳩ミニストップ上
         (はてしなく せんかいするはと ミニストップうえ)

 寒空の下で鳩の大群が隊列を崩さずに旋回している。この旋回に気づいてから10周はしている。少しずつ落伍する鳩が出ている。鳩は下に休憩所のミニストップがあるのを知らないようだ。いつものことながら街の仙人でも鳩の隊列の隊長はどの鳩かわからない。

 (2004・2・13、さいたま市)



178・   家を噛み水吐く鉄顎 解体龍
         (いえをかみ みずはくてつあご かいたいりゅう)  

 口から火を吐く怪獣はいるが、目の前の怪獣は家に向かって水を大きく開けた口からドバーと吐いて威嚇する。強固な鉄顎はコンクリートの塊も食いちぎる。関節をガタガタ震わせて唸り声をあげて家に食らいついて行く。足元に木材や石膏ボードを吐き散らす。
 目を見ると怪獣の目は赤く怒りに燃えている。せっかく作った家を20年経つと簡単に壊してしまう人間に向かって怒りの火を浴びせる。

 (2004・3・8、さいたま市)



179・   首股に春のくすぐり土のキス
         (くびまたに はるのくすぐり つちのキス)

 植木の広大な畑に足を踏み入れると、乾いた細かな土が巻き上げられて私を包み込んで歓迎してくれた。植木の剪定枝が畑の隅に置かれているのを風が教えてくれたので出かけたのだ。畑の風は私が切られた枝で箸を作るのを知っているようだ。
 それにしても人も畑も春になると悪戯をしたくなるようだ。

 (2004・3・11、さいたま市見沼田んぼ)



180・   ぼんぼりがあれば宴の飛鳥山
         (ぼんぼりが あればうたげの あすかやま)

 JR王子駅のホームに停車した電車から少し咲き出した桜の木が見えた。階段に設けられた赤いぼんぼりがそれを教えてくれたからだ。これだけ赤とピンクのぼんぼりが並ぶと開花している桜のように見えてしまう。そこで2、3分咲きの桜が慌てて満開を目指して咲くということを商店街の人は熟知している。

 (2004・3・25、東京都北区飛鳥山公園)

  
 
 

更新日:2018-08-21 10:20:16