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小説

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1.アイスクリームおいしくポプラうつくしく(京極杞陽)〜

挿絵 709*472

   ホクサイマチス作 「面白俳句、ええじゃないか」踊り   

1.   アイスクリームおいしくポプラうつくしく   
         京極杞陽

 漢字を探して使うような俳句人が多い中で、この作者はひらがなとカタカナを使って光り輝く俳句を作る。「おいしい」「うつくしい」という俳句的でないストレートな言葉をうまく組合せた楽しく美味い句である。緑の葉を生い茂らせてそよ吹く風の中で生牛乳から作ったアイスクリームを食べる。北海道旅行の楽しさがここに凝縮されている気がする。
 いい大人がこのようなのびのびした句を作れるのは素晴らしいことである。難解なところがなく、読みにくい漢字もなく、そして自己顕示欲も感じさせず、アイスクリームとポプラだけに集中している。
 この人は豊岡藩主の血筋を持ち、高浜虚子を師とする俳人であったというが、育ちの良さが伸びやかさを求めることになったのだろう。



2.   青梅のうつくしく臀そろいけり
      (あおうめの うつくしくしり・・・・・)
         室生犀星

 尻の代わりにこの臀を使うと不思議と整ったの形のものを想像するように思う。ホクサイマチスは梅雨時期に梯子に乗って丸々と育った古木の梅をもぎ取ったことが何度かあった。枝先で橙色になって軟らかそうであるが、手でもぐとしっかりと硬いのである。高いところに生っている梅を下から手を目いっぱい伸ばして取ろうとする。指先で梅を確認するこの時には、多分作者と同じ感覚を味わった気がする。赤ん坊の尻をつまみあげたような気がした。
 犀星さんは「臀そろいけり」と書いているのであるから、いくつも鑑賞したのであろう。青梅は小さい赤ん坊であるが、産毛が生えた熟した桃をもぐときはどんな感じがするのだろう。想像が羽ばたく。
 ちなみに尻は人体にある穴の中で、上から9番目の穴であることから九の文字がこの漢字に入り込んだのだという。耳2、目2、鼻2、へそ1、ーーー。最後の穴が臀だという。どん尻。
(「詩のある俳句」嶋岡晨からこの句を引く)




3.   青梅に手をかけて寝る蛙かな
      (あおうめに てをかけてねる かわずかな)
         小林一茶

 俳句界の大御所である坪内稔典さんは、この句について、この梅は枝に付いている梅なのか、落ちている梅なのか検討をした。結論は枝についているから青い梅なのだとしている。しかし、これだけの評では一茶は満足しないであろう。江戸から信州の故郷、黒姫山の麓の村に帰って、じっくりと詠んだ句であった。
 先の室生犀星のように青梅の尻に丸さと艶やかさを感じる人もいる。若い梅の尻を鑑賞している犀星の上を行くのが面白がり屋の一茶である。

一茶の気持ちとしては蛙に触らせておくのではなく、一茶自身の手で触りたいのだ。一茶は60歳になって故郷の信濃に帰ってから遅い結婚をした。年が半分ほどの若い娘と一緒になって小さな家に住んだ。この時の一茶の心境は蛙と同じであったのだ。まだ緑の香りがする梅といる気分であったのだろう。若くない細い腕の一茶は若い梅に恐る恐る手を伸ばしていたのであろう。そして大事にした。

更新日:2018-07-17 16:00:27

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