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レ「アメリカじゃ、州が違うと法律も違うんだってね?」
シ「そうよ。お陰で結婚式は大変だったのよ。ねえ、ダグ」
ダ「ああ‥。君の家族が当日、着かなくて困ったね」
シ「そうなのよ。私達はちゃんとこちらの教会で式を挙げて、登録も済ませたのよ。それなのに───」
 この話はどうやら、夫婦が決まって口にする笑い話であるらしかった。シャーリーはそれをまるで物語のように、面白おかしく語ってみせた。
 皆が笑い、場は盛り上がっていた。だがそれでもどこか席上の人々の間では、固くわだかまったものが残っていた。



 ケントは始終ぎこちなかったが、彼の場合はただアガってしまっているだけだった。苦手なフォークやナイフを使わなくて済むデザートの頃になって、彼はようやく積極的にしゃべりだした。
ケ「ユーシャンさんは幸せですね、こんなきれいな奥さんがいて。ユースは頭いいし…困った事なんて何もないじゃないですか」
シ「まあ、ケントさん。ワインはいかが?」
ユ「ケンちゃんもいいお嫁さんが見つかるといいね。いつまでも遠慮してる事はないんだよ」
ケ「いや、俺はそういうの苦手で」
レ「モテないことは無いよな。ジョーンにも気に入られてるし」
ジ「ケント君はいい旦那さんになるわよ。独身なんて勿体ないわ」
ユ「本当に。人がいいから、自分の事をあれこれ考えたりしないんだよね」
レ「ひどいな。それじゃまるで、うちの家族みんながケンちゃんの足かせになってるみたいじゃないか」
 ユースはそう言われても、知らん顔でグラスの水を飲んだ。


 レイクは夕食の間中ユースに無視され続けて、いい加減、頭に来ていた。
 彼は他の人とはメニューが違い、一人だけ流動食に近い物を食べていた。事前にジョーンがリクエストしたため、スープ類やムース、パテやポテトなどをレストラン側がみつくろって出してくれていたのだ。
 だが彼はそれまで食べ物をほとんど口にしていなかっただけに、胃が内容物をすぐに拒否し始めていた。胸がムカムカするのは、ユースの態度のせいばかりではなかったのだ。

更新日:2018-04-05 07:44:46

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