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ジョーンの事情

 その後、ジョーンが835室へやってくると、レイクが彼女にすぐさま尋ねた。
レ「小型のパソコンか何かを持ってきてないか?」
ジ「私のやつは、あなたが暴れて壊しちゃったでしょ」
 レイクが暴れたのはずいぶん前の刑務所での話だったが、その言葉は彼女の冗談だった。
 そうやって話をはぐらかす相手に、少年はさらに詰め寄った。
レ「ユースが目を覚ます前に手を打っておかなきゃ、ひどい事になるぞ。あいつは押さえつけちゃいけないんだ、上手く発散させないと」
ジ「セックスで解決するのは駄目よ。それ以外に何が出来るか考えたの?」
レ「今ここで、ユースが作ったようなチップを作る訳にはいかないけど…プログラムだけなら作っておく事は出来る。緊急対策用の命令を、あらかじめ入れておくんだ。そうすれば、考え得るあらゆる問題に対応できる。問題が起これば自動的にプログラムが開始されて、必要な所へ連絡が行くようにしておけばいい」
ジ「なるほど。でもあなたにコンピューター類は触らせないと、主任に約束してあるのよ。島内ならともかく、ここはアメリカだからあまり派手な真似は出来ないの」
レ「休暇を滅茶苦茶にしたいのか?俺があいつに殺されてもいいのか、ジョーン」
ケ「何でユースがお前を殺すんだ」
 レイクはケントの問いには答えず、じっと彼女を見たままでいた。
 ジョーンの方もレイクを見つめ返したが、心の中で思い迷っている様子はなかった。
ジ「駄目よ。あなたが動くと、事態がさらに悪くなるって結果が証明されてるの。何かしようとしないで、私に任せてちょうだい。絶対に単独行動をしないと誓って。あなたを守ってあげるって、そう言ったでしょ。私を信じてほしい」
レ「でも、それじゃユースは…」
ジ「ユース君を何とかする事は出来ないし、その役も命じられていないわ。私がやれるのは、あなたに危害が及ぶのを防ぐことだけ。それで全てを乗り切ってみせるわ」
レ「ジョーン‥」
 さらに何か言おうとするレイクに近づくと、彼女は少年の口に片手を押しつけた。
ジ「座って、薬の時間よ。夕方まで横になった方がいいわ。レストランで食事をするのだったら、メニューについて先に頼んでおかないとね。あなたにはまだ病人食しか食べさせられないから」

更新日:2018-03-13 14:34:38

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