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第二章



地球(ガイア・オートラス)帝国軍(機動隊を含む)の入隊式は、建国2000年祝賀祭前日、帝国スタジアムにて1万人規模で滞りなく開催されたらしい。


M(モンゴロイド)地区・モンゴロイド系J地区ドームシティの隊員の入隊式は、遅れること祝賀祭当日、早朝7時から国民シティホールで、テロへの黙祷式も含めて簡素に執り行なわれた。


式典終了後迅速に、祝賀祭警備に配属される事になる。


ハルカが繕ってくれたスーツの縫い目が気になるが仕方がない。


新品に交換してもらえる権利などクローン人種には無いのだから・・・。


参加者が約500名という小規模な式典であるにもかかわらず、帝国総統ファシル・イシュビシュが祝辞を述べると、あらゆるところから歓声が上がった。


ニュースでしか顔を見たことがなかったが、最前列からうかがった姿は思っていたより、ずっと理知的でスタイルが良く、顔立ちもりりしく整った人物であった。


眼光こそ鋭いが瑠璃色の瞳は、吸い込まれそうなほどの魅惑を感じさせる。


プラチナブロンドの長髪を持つ、30歳の若き指導者が発する言葉ひとつひとつに貴品を感じるのは自分だけではないはずだ、とフィフティは感じた。


そして、さすが支配階級・更に一般市民からも選ばれただけの資質はある、と思えた。


ファシル自身が配属した身辺警護の親衛隊も素晴らしい能力者達だという噂を聞いている。


「君達の入隊を、心より感謝し、歓迎する。‥‥‥
今は一般市民権を持たない君達ではあるが、建国2000年を機にその他の改革を促進すると共に、君達が一般市民権に近づく望みを私は欲しているところである。‥‥‥‥‥‥‥
帝国発展の為に、君達の尊い力を発揮し尽くす事を切望している」


と言うファシルの言葉で感激し、涙で鼻をすする輩を背にして、サティがいたならきっと、皮肉っぽく言うんだろうな‥‥‥。とフィフティは思った。


「要するに、我らクローン人種における権利の改革を望んではやるが、約束はしないよ。だけど帝国の為には尽くせよ!って事なんだよな?」


「まあ・・・な。・・・えっ?」


サティの声が聞こえたような気がしてあたりを見回したが、そんな訳があるはずが無い。


サティが皮肉りそうな言葉を想像した「心の声」だったのだろうと無理やり納得させた。


次の瞬間、ファシルと視線が合ったような錯覚に陥ったが、どうやら思い過ごしのようだった。


淀みない歓迎の言葉を終了させ、ファシルは祭典の開催に控える為に、颯爽と会場をあとにしたのであった。





更新日:2018-02-26 17:12:37

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