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第一章



国家認定養母であるハルカの、


「遅刻でもしたら大変!急ぎなさい!」


と言う金切り声を背後に受けながら、フィフティは自宅の自動玄関ドアから屋外へ飛び出し、走り出した。


澄み渡るように青くホノグラム設定された天井には、目を側めるほど強く眩い人工太陽が輝いている。


空中で、銀色をしたロボット鳥達が、


「入隊おめでとう!入隊おめでとう!」


と高らかに合唱を繰り返しながら、せわしなく花火を打ちまき散らかしている。

昼間でも見える最新科学の花火らしい。


新調したばかりで真新しい機動隊戦士スーツの白い繊維が、人工太陽の光を浴びて、一本一本キラキラと虹色に反射していた。



フィフティは走りながらポケットに左手をつっ込み携帯合成器を取り出した。


そして道端に生える雑草をむしり取り、落ちていた紙屑やその他のゴミと一緒に機械へと押し込んだ。


フタを閉め、簡単なボタン操作をすると数秒後、ピピッと鳴る合図音と同時にフタが開いた。


ポーンと飛び出した、全体的にうす緑色のサンドウイッチを右手でキャッチすると、すぐさまかぶりついた。


ハルカがいつも合成してくれるサンドウイッチより、ツンと青臭く味もだいぶ落ちるが寝坊したのだから仕方がない。


それをほおばりながらフィフティは、自宅と同じ形状をした大小さまざまな色彩で色どられた丸型ドームが立ち並ぶ住宅地区を、いっきに駆け抜けて行った。



本当は10歳の頃から10年間もお世話になったハルカに、感謝とお別れを丁重に述べてから出発するはずだった。


国家認定の養父母は、10年間づつ交替するように国で定められている。


ハルカは20歳から養母を始めて今年60歳になるが、若々しくはつらつとしているので10歳以上は若く見られる。





更新日:2018-01-25 16:17:22

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