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目覚め

真っ黒で真っ黒な世界に誰かが僕を呼ぶ声がする。
力の入らない身体でも、無理やり意識だけは動かせた。

「誰?」
真っ黒な世界に僕は呼び掛ける。
「はっ、誰とは失礼だな」
姿こそ見えないものの、返事だけは返ってくる。

聞き覚えのある声が。

「俺は、お前だよ」
ありえない、認めたくないが、確実にそれの声は僕の声だった。
オズというありえない存在がいるが、こんなこともあるのか。
息を呑む僕の事なぞ知ることなく、もう1人の僕は呑気そうに喋る。

「それにしてももう1人の俺は随分と派手にやられたな。情ねぇ」
「ご、ごめん」
「いや、自分に謝られてもな…それより、何故あの時俺と交代しなかった?」

あの戦いの時、見てるしかなかった僕にもう1人の自分はずっと交代しろと言ってきていた。
もう一人の自分からの問に僕は黙りこくるしかなかった。
きっとバツの悪い表情だったんだろう。

「まだ、あの時のことを後悔しているのか」
流石は自分、何を考えているのかお見通しだった。
「何も言わないということは肯定ってことでいいんだな…ガキじゃあるまいし、いつまで自分の殻に閉じ篭ってやがる。」

(うるさい)
「まぁ、いい。お前が死ななければ俺も死なないからな。だが片腕ないのは少々面倒だ。くっ付けておくぞ。」
「お前がオズを調べて何をしたいのか理解はできないが、そろそろお目覚めの時間だ。」

更新日:2018-05-02 20:37:37

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