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朝貌に好かれそうなる竹垣根 
朝貌にまつはられてよ芒の穂
朝顔の今や咲くらん空の色
朝貌の黄なるが咲くと申し来ぬ
朝貌の葉影に猫の眼玉かな
朝貌や垣根に捨てし黍のから
朝貌や咲た許りの命哉
朝顏や手拭懸に這ひ上る
朝貌や鳴海絞を朝のうち
朝貌や惚れた女も二三日
朝懸や霧の中より越後勢
朝桜誰ぞや絽鞘の落しざし
朝寒に樒売り来る男かな
朝寒の顔を揃へし机かな
朝寒の膳に向へば焦げし飯
朝寒の鳥居をくゞる一人哉
朝寒の楊子使ふや流し元
朝寒の冷水浴を難んずる
朝寒み白木の宮に詣でけり
朝寒み夜寒みひとり行く旅ぞ
朝寒も夜寒も人の情かな
朝寒や生きたる骨を動かさず
朝顔や売れ残りたるホトトギス
朝寒や雲消て行く少しづゝ
朝寒や太鼓に痛き五十棒
朝寒や自ら炊ぐ飯二合
朝日さす気色や広き露の原
朝日のつと千里の黍に上りけり
足腰の立たぬ案山子を車かな
蘆の花夫より川は曲りけり
足弱を馬に乗せたり山桜
梓彫る春雨多し湖泊堂
梓弓岩を砕けば春の水
汗を吹く風は歯朶より清水かな
あたら元日を餅も食はずに紙衣哉
新らしき命に秋の古きかな
新らしき蕎麦打て食はん坊の雨
新しき畳に寐たり宵の春
新しき願もありて今朝の春
あつきものむかし大坂夏御陣
あつ苦し昼寐の夢に蝉の声
後に鳴き又先に鳴き鶉かな
穴のある銭が袂に暮の春
穴蛇の穴を出でたる小春哉
姉様に参らす桃の押絵かな
阿呆鳥熱き国にぞ参りける
甘からぬ屠蘇や旅なる酔心地
天草の後ろに寒き入日かな
あまた度馬の嘶く吹雪哉
尼寺に有髪の僧を尋ね来よ
尼寺や芥子ほろほろと普門品
尼寺や彼岸桜は散りやすき
天の河消ゆるか夢の覚束な
尼二人梶の七葉に何を書く
雨多き今年と案山子聞くからに
雨がふる浄瑠璃坂の傀儡師
雨ともならず唯凩の吹き募る
雨に雲に桜濡れたり山の陰
雨に濡れて鶯鳴かぬ処なし
雨に雪霰となつて寒念仏
雨晴れて南山春の雲を吐く
鮎渋ぬ降り込められし山里に
鮎の丈日に延びつらん病んでより
荒壁に軸落ちつかず秋の風
嵐して鷹のそれたる枯野哉
あら鷹の鶴蹴落すや雪の原


 
 
 

更新日:2021-04-21 06:23:33

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