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漱石俳句の検索一覧(あいうえお順)  相逢ふて〜


相逢ふて語らで過ぎぬ梅の下
挨拶や髷の中より出る霰
明(あい)た口に団子賜る梅見かな
生憎(あいにく)や嫁瓶を破る秋の暮
合の宿御白い臭き衾哉
逢ふ恋の打たでやみけり小夜砧
青石を取り巻く庭の菫かな
青梅や空しき籠に雨の糸
青葉勝に見ゆる小村の幟かな
仰向(あおむい)て深編笠の花見哉  1

青柳の日に緑なり句を撰む
青柳擬宝珠の上に垂るゝなり
青山に移りていつか菊の主
赤い哉仁右衛門が脊戸の蕃椒
閼伽(あか)桶や水仙折れて薄氷
銅の牛の口より野分哉
赤き日の海に落込む暑かな
赤き物少しは参れ蕃椒
垢つきし赤き手絡や春惜む
暁に消ぬ可き月に鹿あはれ  2

暁の埋火消ゆる寒さ哉
暁の梅に下りて嗽ぐ
暁の水仙に対し川手水
暁の夢かとぞ思ふ朧かな
暁や消ぬべき月に鹿あはれ
暁や白蓮を剪る数奇心
暁や夢のこなたに淡き月 
秋浅き楼に一人や小雨がち
秋暑し癒なんとして胃の病
空家やつくばひ氷る石蕗の花 3

秋風と共に生へしか初白髪
秋風の聞えぬ土に埋めてやりぬ
秋風のしきりに吹くや古榎
秋風の一人をふくや海の上
秋風や唐紅の咽喉仏
秋風や京の寺々鐘を撞く
秋風や坂を上れば山見ゆる
秋風や走狗を屠る市の中
秋風や棚に上げたる古かばん
秋風や茶壺を直す袋棚  4

秋風やひゞの入りたる胃の袋
秋風や屠られに行く牛の尻
秋風や梵字を刻す五輪塔
秋風や真北へ瀑を吹き落す
秋草を仕立てつ墓を守る身かな
秋さびて霜に落けり柿一つ
秋寒し此頃あるゝ海の色
秋雨に明日思はるゝ旅寐哉
秋雨に行燈暗き山家かな
秋雨や杉の枯葉をくべる音  5

秋雨や蕎麦をゆでたる湯の臭ひ
秋高し吾白雲に乗らんと思ふ
秋立つ日猫の蚤取眼かな
秋立つや一巻の書の読み残し
秋立や断りもなくかやの内
秋立つや千早古る世の杉ありて
秋立つや萩のうねりのやゝ長く
秋立つや眼鏡して見る三世相
秋となれば菊も画くなり俳諧師
秋となれば竹もかくなり俳諧師
秋茄子髭ある人に嫁ぎけり  6 61

秋に入って志あり天下の書
秋にやせて薄の原になく鶉
秋の江に打ち込む杭の響かな
秋の思ひ池を繞れば魚躍る
秋の蚊と夢油断ばしし給ふな
秋の蚊の螫さんとすなり夜明方
秋の蚊の鳴かずなりたる書斎かな
秋の蚊や我を螫さんと夜明方
秋の川真白な石を拾ひけり
秋の川故ある人を脊負ひけり  7

秋の雲只むらむらと別れ哉
秋の暮関所へかゝる虚無僧あり
秋の暮一人旅とて嫌はるゝ
秋の暮野狐精(やこせい)来り見えて曰く
秋の蝉死に度くもなき声音かな
秋の空浅黄に澄めり杉に斧
秋の空幾日迎いで京に着きぬ
秋の空鳥海山を仰ぎけり
秋の空名もなき山の愈高し
秋の蠅握つて而して放したり  8

秋の日中山を越す山に松ばかり
秋の日のつれなく見えし別かな
秋の山いでや動けと瀑の音
秋の山後ろは大海ならんかし
秋の山静かに雲の通りけり
秋の山に逢ふや白衣の人にのみ
秋の山松明かに入日かな
秋の山南を向いて寺二つ
秋はふみ吾に天下の志
秋晴に病間あるや髭を剃る  9

秋晴や山の上なる一つ松
秋行くと山僮窓を排しいふ
明くる夜や蓮を放れて二三尺

扛(あ)げ兼て妹が手細し鮓の石 
明けたかと思ふ夜長の月あかり
明けの菊色未だしき枕元
明けやすき七日の夜を朝寝かな
明け易き夜ぢやもの御前時鳥

   



更新日:2021-04-20 17:57:01

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