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「……なあ、ここがキミのうちなのか?」
「うん!そーだよ!」


 ただの洞窟だった。少なくとも見た感じは。


 なんだろう、もう少し家っぽいものを想像してたから残念過ぎる。そう言えば思い出したが、ここはあのくそじじいが送り込んだ世界だ、残念に違いない。



「さあ、入ってよおにーさん、なにもないけどさ!」
「おじゃましまーす」


 入ってみるとそこは意外と広く、狭くみすぼらしいのは入り口だけだった。

 入ってしばらくはただの直線の洞窟だったが、突然ホールのようになり、いくつかに分岐していた。

 アポロニアの案内により一番右側の通路へと進む。



「てかさ、アポロニアって呼びにくいからニアってよんでいい?」
「んー?まあかまわないよ。じゃああたしはおにーさんのことナカって呼べばいい?」
「できればエドって呼んでほしいな」
「わかったやっぱりタナカで!あたしのことは好きに呼んでいいよー」


 通路の奥はさっきのホールよりもう少し小さな部屋だった。おかれているものは小さな机と、ベッドらしい枯れ草が置かれていた。
 また、その部屋につながる隣の部屋には、小さな竈が設けられていた。


「なんか思ってたよりきれいだな。もっと暗くてジメっとしてるイメージだったよ」
「いいでしょー。ところどころ亀裂があるから光も入ってくるからそこそこ明るいし、亀裂のおかげで風通しいいから空気もそれなりに入れ替わるし」


「あとさ、聞きにくいけどトイレとかはどこですればいい?」
「トイレ?」
「ああ、うんちやおしっこだよ」
「そこらへんですればいいよ」








「……え?」


 返事をするのにたっぷり数十秒かかってしまった。
 よくよく考えてみると、下水道などの設備ができるのは中世以降というか割と最近だから、トイレとかの設備がないのは当然かもしれなかった。



「えーと、じゃあ初めのホールから延びてるあと二つの通路はどこにつながってるの?」

「真ん中は地下湖につながってるの。一番左もホールになってて、そこは燻製とか干し肉作るのに使ってるよー」

「そういえば狩人って言ってたよね」
「狩るぞー」

 そういって耳も尻尾も上に向けて両手を上げるその子は、狩人というにはあまりにもかわいらしかった。




 うーん、せっかく泊めてもらってるんだし、何か返せるものとかないかな。


「そうだ、弓って知ってる?」
「ゆみ?なーにそれ」


 おっと知らなかったようだ。


「じゃあ作ってあげるよ。ナイフとかはある?」
「はいどーぞ」
「ナイフはあるんだ」


 洞窟は山に掘られていたので、近くの木から皮をはぎ、よくしなる枝を切り取って即席の弓を作った。
 矢は適当に形のきれいな枝を数本とり、先をとがらせる。


「できたよ、どうぞ。ほんとは矢は石とか鉄でおもり代わりや、返しとかつけるんだけど、とりあえず即席ってことで」
「ほえー、これが弓なのねー」


 金髪っ子は物珍しそうに弓を眺めている。
 弦代わりの丈夫な蔦をぴよんぴよんやって、いろんな角度で弓を眺めていじくりまわして一言。



「おにーさん、結局これ何に使うの?」


「あれ、説明してなかったっけ。それは飛び道具ってやつで、遠くの獲物をしとめるために使うんだよ」

 試しに俺が射ってみると、ニアは飛んで喜んだ。


「すごいすごーい!こんな道具初めて見たよ!すごいねこれ!」
「そーだろそーだろ、おにーさんはすごいんだぞー!はっはっはー」



「ところでニア、弓も知らずに今までどうやって狩りしてたの?」
「石とか投げてた」


 満面の笑みを浮かべながら、何かを投げる身振りをする。
 石を投げつける程度で獲物が撮れるとも思わないけれど、愛らしく、つい俺まで微笑んでしまった。


「えいっ」


『どごおっ!!』



 突然ニアが石を普通に投げた。石は普通にけたたましい音を立てて、普通に大木に大穴を開けた。



「……弓、いらなかったね」

更新日:2017-11-28 04:56:55

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異世界に行かせてもらえるというからやる気だしたのに