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新たなる出会い

「おにーさーん」

「ちょっとー」

「ねえ起きてよー」

「おいおーい?」



 ゆっくりと意識が覚醒してゆく。その最中、なにか毛の塊にはなをくすぐられ、たまらず俺は飛び起きた。


「ハ、ハックショッ!!」

 

 ずず。くしゃみと同時に少し出た鼻水を吸う。妹はこの音嫌がったっけな。俺はパソコンのファンとかの音が嫌いだったけど。



「いやいや、じゃなくて、キミだれ?」


 意識がはっきりすると、目の前には少し水滴のついた少女がいた。

 年は大体12歳くらい、金髪碧眼の端正な顔立ちの少女だった。見た目は文句なしの120点。



 問題があるとすれば、その綺麗な顔の上にのっている耳と、さっきからちょろちょろしているそのしっぽだった。


「あたしは狩人のアポロニア。おにーさんはだれ?」

 片方の耳をぴくっとさせながら首を傾げ尋ねる。

 もうね、めっちゃ可愛いのこの子。


「あー、おにーさんはちょっと分け合って行き倒れてるところの田中……いや、違う、エドワードだ」
「ふうん?タナカ……?」
「違う違う、エドワードだ。エドと呼んでくれ」
「タナカでしょ?」
「エドワード!」
「タナカ」
「エド!!!」
「タナカ」


 …………。



「それでタナカはこんなところでなにしてるの?」


 ……駄目だこの子、全く話を聞いてくれない。何が何でもタナカと呼んでくる。


「だから行き倒れてるんだよ。いきなりほっぽり出されたから行く当てもなく、どうしていいかわからないからこうしてふて寝してた」


「行くところないならあたしの家おいでよ!おにーさん面白そうだし!」


 生まれてこの方、一度も女の子からお家へ招待などされたことのない、寂しい前世の俺に自慢したい。この世界に来てたった一日で招待されてしまった。

 この際おもしろそうと表現されたことは彼方へ放り投げておく。


「いいのか!助かる!キミが良ければ是非行かせてくれ」


「はいさー!んじゃちょっと歩くけどさあ出発だー」
「おー!」













 結論から言うと、彼女のおうちはめちゃくちゃ遠かった。
 具体的には徒歩で二日ほどの距離だった。

更新日:2017-11-28 04:52:45

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異世界に行かせてもらえるというからやる気だしたのに